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ジーン・M・アウル
Jean M. Auel
大地の子エイラ 上

訳:中村 妙子

  • 最終氷河期の終わり、地震で両親を亡くしたクロマニヨン人の少女エイラが、ネアンデルタール人の部族に拾われて成長し、再び自分と同じ種族に帰って行く過程を描く長編の第1部。評論社からハードカバーで第4部まで刊行されている。
  • 文庫版は残念ながら第1部のみ。訳を聞くとこの第1部が映画化されてたための記念刊行なのだそう。もしかすると絶版されているかもしれません。が、ハードカバーで読んでも十分価値のある作品です。
  • 上巻では主人公のエイラが部族に拾われ、カルチャーショックの中で徐々に部族にエイラが受け入れられる過程を描いています。さらにエイラを巡る部族の不協和音の中に、現実世界のコミュニティーの中でも必ず起こる「異分子排除」の心理が書かれていて、一つ一つの事件に対するエイラと部族の反応に考えさせらます。
大地の子エイラ 中

訳:中村 妙子

  • 薬師イザの下で薬草や治療について学ぶエイラ。これは万一にも部族を追い出された時、一人で原野をさ迷い他の部族の余計者として屈辱的な生き方をしなくても良いようにとのイザの親心だった。部族のリーダー、ブルンを治療したことで、エイラはますます部族に受け入れられるようになる。しかしブルンの息子ブラウドはそんなエイラを、次期リーダーとして自分が受ける注目を奪う存在として激しく攻撃する。
  • 中巻でのエイラは部族に受け入れられようとさらに努力を重ねます。が、クロマニヨン人特有の好奇心は部族が厳しく定める男女の仕事分担の枠を超えてしまうのです。やりたいことがあるのに「慣習に反する」とやらせてもらえない事は多いもの。誰もが突き当たる壁を「部族の慣習」に置き換えて描くところなど、アウルの観察眼の鋭さを感じさせるところです。
    そしてこの巻で初めてエイラは部族と自分の外見がかけ離れている事を知るのです。それに傷つくエイラにブラウドの暴力が追い討ちをかけます。
大地の子エイラ 下

訳:中村 妙子

  • 下巻はエイラの妊娠、出産となぜそれが起こったかのエイラの洞察に始まり、部族の集会でのエイラの活躍とブラウドのわだかまるエイラへの嫉妬、そして親代わりだったクレブの死とエイラの追放で終わります。
  • 第1部の3巻を通じて書かれているのは「自分が自分らしくあるために何をすべきか」なのではないかと思っています。それはエイラが部族に育てられながら決して「部族の女」にはならなかったからです。
    もちろん部族になじむ為エイラは様々な努力をします。けれど「自分にとって」非合理的な慣習(男女間の仕事の区別や妊娠に関する風説)には疑問を持ち、分析し、納得できないときには自分なりの解釈や行動を加えるのです。
  • また、アウルの鋭い筆致は読むたびに私に違った印象を与えてくれます。初めて読んだときはもちろんエイラに感情移入してましたが、読み返すとブルンやクレブの行動にうなずき、さらにはブラウドの立場にさえたってしまうのです。
    多分にその時の心理状態も影響するのでしょうが、それだけアウルの描写が細部にわたっているということでしょう。人物描写の以外にも、多くの資料に当たって描かれた氷河期の動植物などが作品にさらなるリアリティを与えています。
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