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ドロシー・L・セイヤーズ
Dorothy L. Sayers
ピーター卿の事件簿

訳:宇野 利泰

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  • 貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿の登場する中・短編集。単純なトリックから重厚な推理までが揃った、小気味良いストーリーは読んでいて飽きが来ない
  • 「貴族探偵」と断っているように、イギリスが舞台のこの作品はデンヴァー公爵家の次男坊であるピーター卿が至るところで事件に遭遇するというもの
  • 創元推理文庫のシリーズ1巻目であるが、出来るならば2巻目『誰の死体?』以降を1冊読んでからの方が楽しめる。というのもこの本は日本オリジナル編集であるため、登場人物の描写や時系列が分かりにくいからだ
誰の死体?

訳:浅羽 莢子

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  • 実直な建築家の家の浴槽で、見知らぬ男が死体で発見された。立派な金縁の鼻眼鏡以外身につけずに発見されたこの死体は果たして誰なのか?どうやって運び込まれたのか?
  • 本書はピーター卿を世に送り出した著者の長編第1作。貴族探偵の名に恥じず、よく気の付くウィットに富んだ執事に助けられ、豪華なフラットに住んで会員制クラブに顔を出すピーター卿の生活を見ると、第一次大戦直後のイギリスの様子が伝わってくる
  • しかしながら、バランス良く配された庶民のささやかな生活や当時の社会背景の描写が、作品全体にリアリティを与えており、推理小説のプロットとして以外にも読み応えのある作品。また欧州系の作品では典型的な「お坊ちゃんとしっかり者の執事」という関係も秀逸
雲なす証言

訳:浅羽 莢子

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  • ウィムジィ家の嫡男、現デンヴァー公爵が殺人の疑いで逮捕された。被害者は実の妹の婚約者で、しかもその妹は検事側の証人だという。兄の無実と妹の真意を確かめるため、ピーター卿は事件解決に動き出す。ところが関係者それぞれが自分の信条を守るためかたくなに証言を曲げないので、その矛盾する証言により捜査は正に雲を掴むような展開となる
  • 今回の小道具は「手紙」と「吸い取り紙」。手紙はペンとインクで書かれるのが普通であった時代の作品ならではのプロットである。また「フランス語の教養」も大きな鍵となるのはヨーロッパ事情を反映しているとも言えよう
  • ピーター卿シリーズでは、ピーター卿が常に「犬も歩けば」的に証拠や解決のヒントに突き当たるのであるが、それを「面白い」と取るか「ご都合主義」と取るかで作品の評価が大きく分かれるように思う(もちろん私は「面白い」派)
ナイン・テイラーズ

訳:浅羽 莢子

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  • 冬の悪天候の中、イギリスの片田舎で車を事故らせたピーター卿は、なりゆきによりその村の教会のクリスマスミサで鐘を突くことになる。その後、村の素封家の葬儀で墓から見知らぬ男の死体が出て来たことから、ピーター卿は「貴族探偵」として協力を要請される
  • 本書はセイヤーズの代表作とも言われるだけあって、非常に凝った筋立てとなっている。一見すると別々の事件が実は一つに繋がっているという、推理小説の王道を行く作品。中でも飛び抜けているのは教会にある鐘の演奏法(転座鳴鐘術)を利用した暗号文。また作品の各章の題もこの鳴鐘術に因んでつけられている
  • 原題“Nine Tailors”とは「九告鐘」と訳され、成年男子が死亡した場合に鳴らされる弔鐘のことを指している。作品の節目で非常に効果的に使われている「教会の鐘」であるが、ヨーロッパ(キリスト教圏)においてどれだけ「鐘」が身近で、暗示的なものかが良く分かる作品でもあろう
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