長江落日賦
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- 田中芳樹が描く、中国が舞台の歴史小説。ともすれば英雄譚に偏りがちなジャンルであるが、著者は戦国の乱世を中心に「歴史に名のみを留める」人物に光をあて、その時代時代のうねりを書き出している
- 「名のみを留める」人物を中心に据えているためか、作品全般に拭いきれぬ寂寥感が漂う。歴史の真実を見据えながらも史実に残らず、時代の傍観者としての役割をになった彼らに、それは共通した雰囲気なのかも知れない
- 「野心」を抱きその命ずるままに権力の階段を駆け上る者、「権力」を握りながら己の不明のため全てを失う者、それらの抗争に巻き込まれ怨嗟の声を上げる無辜の民・・・。ある意味で「乱世」とは人間の隠された部分が極端な形で白日のもとに晒される時代なのであろう
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