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諶 容
Rong Shen
人、中年に到るや

訳:林 芳

  • 1980年に書かれたこの本は、文化大革命(文革、1966-1976)後の中国で社会の担い手となっていった世代(日本で例えると「団塊の世代」が一番近いイメージ)である、中年の女性眼科医・陸文[女亭]が主人公([ ]内は一文字。外字が表示されない場合を考え分割表示。読みはルウ・ウェンティン)
  • この陸先生は、眼科医・妻・母の3足の草鞋を履き、全てを完璧にこなそうと努力する「けなげな」女性。けれども夫は学究一筋の学者で、彼女を気遣うものの家庭の負担は全て彼女に・・・。というわけで過労による心筋梗塞で倒れた彼女の回想と周囲の心配で話は進む
  • 中国では文革の影響で、医師や科学者などインテリの地位が大変低く見られた時期があり、その後も彼らは社会の復興の中で積極的役割を求められながらも、正当な評価を受けなかった。「不遇」に嘆く彼らはツテのある者から次々と海外へ移住を開始し、残る者への負担が更に増加、重大な社会問題となっていたものの対応が驚くほど遅れていたため、社会の関心を惹くようにと本書が書かれたと言っても過言ではない
  • 人物像が「耐える女」の美化に過ぎる気もあり、事実「感傷的過ぎる」との批判も多かったそうだが、作者の意図が「平凡な」人間である陸先生を通じて「等身大の中年世代像」、「生きることの意義」を描くことにあったためか、発表当時『自分自身の事を書いてくれた』と中年世代から大きな反響を得たそうである。もちろん20年近い歳月が経ち、改革開放の進む中国において、彼らインテリの地位が大きく向上していることはいうまでもない
  • 167Pの中編小説なので気軽に読める。また映画化もされ同じ邦題でビデオ化されているので、興味のある方にはこちらもお薦めする
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