鉄道のおはなし 〜今日も電車に間に合いません〜



ホームページ開設記念コラム、題して“鉄道の魅力について語る”

鉄道の魅力をひとことで語ることはおそらく困難でしょう。鉄道の愛好家をよく“鉄ちゃん”などと親しみを込めて呼びますが、数ある趣味の中でも、鉄道という趣味ほどその興味のベクトルが多様化しているのはないといってもいいでしょう。

深さでいえば、ただ見る・乗るのが好きというレベルから、それこそマニア・フリークといえるどっぷりと浸かったレベルまで。オタクなんていう言葉ができるずーっと前から、鉄道に造詣の深い人はいっぱいいました。いわば歴史の深い、由緒あるオタクともいえるでしょう。身近にあるものだからこそ、それに対する愛着の度合いは本当に人それぞれなのです。

そして方向性でいえば、鉄道に乗ること・見ることを基本として、列車旅をこよなく愛する人もいれば、旅のひとコマを写真に収めるのを趣味とする人や、模型やジオラマ作りに情熱を注ぐ人もいますし、鉄道に関するもののコレクター、それが興じて車両に住んでしまう人もいるくらいです。鉄道が趣味といっても、普段やっていることはみんな面白いくらいに違います。

またこれほど年齢層が幅広い趣味もないでしょう。ちっちゃな子どものときからでも、鉄道に興味を持つことはありますからね。電車が通ると赤ちゃんだって喜ぶくらいですから。逆にどんなに歳をとっても、鉄道での旅行は最高の娯楽になりえますし。

そんなこんなで鉄道の世界は深いと感じられずにはいられません。あんな何の変哲もないレールの上を車両がただ走っているだけなのに、どうしてそんなにうれしくなるものなんでしょう。

これは解答の一例かもしれないですが、鉄道は人間の手で作り上げたものだからこそ、そこには多くの人の生活を感じることができ、そこに何か心を動かされるものがあるのだと思います。鉄道を敷いた人々、鉄道の走る街の人々、そして鉄道に乗った多くの人々の思いが、何の変哲もないレールに、言葉には表せない重みを与えているのかもしれません。それは役目を終えた切符や、置かれている車両にも言えることでしょう。

私は旅が好きです。旅は人間を大きくするものだと思います。それはやはり旅というのがいつもの生活では味わえない体験をするからでしょう。「月日は百代の過客にして、行き交う年もまた旅人なり」と芭蕉が書いたように、人生は旅にたとえられるでしょう。逆に考えれば、旅という体験は、人生にそのままの形でプラスされるものなのだと思います。

もちろん私は車での旅も大好きです。ドライブも好きですし、他人の運転する車に乗ってはいっつもはしゃぎまわってるくらいです。では何で鉄道なのでしょう。どこかで誰かが書いていましたが、車は「無軌道」であるがゆえに、事故や混雑などといった「無秩序」を生み出してしまうのです。無論、車に乗ることが無秩序の原因とは言えませんし、鉄道も時に痛ましい大事故を引き起こすことがあります。何と言いましょうか個人主義的な趣のある車やバイクは常に自らが主体でなければいけないのに対して、鉄道に乗る時は常に客体でなければいけないため個人のワガママが抑制されるという点があるのかもしれません。

言ってみれば、車での旅の面白さは、どこにでも行けるという自由度の高さ、アナログさにあり、そして鉄道の旅の面白さは、鉄道の持つある種のお行儀の良さというか、律儀なところ、いわばデジタルな面にあるかもしれないと思います。

でも車内の、車窓からの、そして線路の外から見る風景は、デジタルさとは全くかけはなれた、何にも変換しがたい、自然そして人のぬくもりを含んだものです。列車に揺られてたどりついた見知らぬ土地の空気は、その場でしか味わえない一度きりのものです。そのギャップが、何か心を動かさせるものとなるのです。

通勤・通学の列車から見えるのはいつもの風景で、車内の人たちへの関心も持つことはできず、無機質な日常の一部かも知れません。でもそんな日常こそが、今息づいている人間の営みそのものであり、そんな日常を非日常の立場で楽しむことこそが、旅の本質なのだと思います(ん〜、どうかな?)。ふと足を止めて、途中下車をして見知らぬ街を歩いてみたりすること、そんな日常のルーティンからの脱却が、時には新鮮で他では味わえない体験になることでしょう。

鉄道には、単に移動のための手段と割り切ってしまうには惜しいほどの、あまりにもたくさんの面白さがあります。ホントにただの移動手段の一部ならば、SLなんていらないでしょう。そして独特のデザインの車両も変な形の駅舎も不必要ですし、駅弁の味わいや車窓風景の美しさまでも無価値なものになりさがるでしょう。でもそうしたものが面白くて仕方ないのです。

やっぱりこんな私が鉄道の魅力を語るには力量不足でした。また何かの機会にこうしたことを考えたならば、ご紹介したいと思います。

この私のつたないホームページで、そんな鉄道の楽しさを知っていただけたならばうれしいです。





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