ワートリ 245話感想



ジャンプスクエア10月号、ワールドトリガー245話の感想です。


前話で、思い切って自分と三雲(修)は何が違うのかとヒュースに問いかけた麓郎くん。
ヒュースからの答えは、「そもそもメガネ以外に何か共通点があるのか?」というもの。大真面目な顔から繰り出される言葉だからことおもしろいって!
メガネに着目しているのはえらい。栞ちゃんがよろこんでるぞ!
半崎くんに「急にどしたんすか?麓郎(ろくろー)さん」とびっくり顔で訊かれ、一度は「別になんでも……」と誤魔化しかけてしまう麓郎くんですが、このままじゃダメだと思い直すのがえらい。
「ここに何か鍵があるってオレの勘が言ってる……! オレ自身を変える鍵が……!」と、”勘”と表現していますが、むしろちゃんと思考した結果としてたどり着いた考えなんじゃないかと思う。
この後、「悪りぃ ちゃんと言い直す」と言って、なぜ自分が三雲(修)との違いを知りたいかを言語化できてるし。
その言語化ですが、まず修くんの隊がランク戦デビューしてすぐB級2位を獲ったのに対して、「三雲より1年以上長くB級ランク戦やってんのに あっさり追い抜かれたオレとは何がちがう?」と問い直しました。
ヒュースはまず、「個人の才能」の話、トリガーを使った戦闘では「修より麓郎(ロクロー)のほうが間違いなく上だろう」と断定。理由は、トリガーを使った戦闘ではトリオン量の大小が一番大きな要素だから。一方、麓郎くんが言ってるのは部隊成績の話で、「単純に部隊(チーム)としては玉狛第二のほうが上だったという結論では不満なのか?」と逆質問。
麓郎くんは、「……例えば オレが三雲の代わりに玉狛に入ってたとして B級2位になれたかどうか自信がねえっていうか…… 逆に……もし三雲が香取隊にいたら もっといい順位獲ってたような気もするんだよな」と、あいまいな表現ながら自分の訊きたいことをちゃんと言語化できてますね。えらいぞ!
……ここで、ミニキャラではあれど、玉狛第二の隊服を来た麓郎くん(冷汗あり)と、香取隊の隊服を来た修くん(冷汗なし)というレアイラストが爆誕してしまいました! 修くん、君には香取隊の隊服は危うすぎるから、実際には絶対に着ちゃダメだぞ! これを着こなしている麓郎くんとミューラーは改めてすげえや。
この疑問に対するヒュースの答えは、「……それは おそらくその通りだろうな」というものでした。ヒュースなりに言葉を選んでる感じですね。
半崎くんと日佐人くんはヒヤリとしてるけど……
麓郎くんはめげずに、「ってことはトリオンが低くても三雲には部隊(チーム)を勝たせる力があるってことだろ? それがなんなのか知りてえんだ」と、さらに尋ねます。頑張ってるな、ろっくん!
ヒュースは「そうか……」とつぶやいた後、斜め上の方を見てしばし熟考。
沈黙に居たたまれなくなったのか、半崎くんが「……つーか麓郎さんって そんなに三雲のことライバル視してたんすね」と話しかけました。
麓郎くんは、ライバルというのとはちがって、「三雲は『こっち側』だと思ってたんだよな」と言い、訓練していないのにぶっつけで力を発揮する葉子ちゃんのような『あっち側』に対して、ろっくんのように地道に訓練するタイプが『こっち側』で、修くんも同じ『こっち側』だと思ったと説明。
そこで、ヒュースが「……今『地道に訓練する』と言ったが 麓郎は普段どんな訓練をしている?」と、訓練内容に突っ込んできました。ろっくんが「ふつうに訓練室で的立てて……」と自信なさげに答えていると、日佐人くんが「犬飼先輩に射撃教わってるんですよね」と付け足してくれました。
「犬飼に……? 具体的にはどんな内容だ?」と、さらに突っ込むヒュース。ろっくんは「週2で二宮隊の訓練室にお邪魔して ランク戦の感想とかしゃべりながら2時間くらい 射撃の基本を習ってる感じだな」と説明。そして、「訓練中も常にいろいろ話してるから そっちのほうが勉強になるかな」と言い、それを聴いてまた思案顔になるヒュース。
そして、「習い始めて長いのか?」と尋ね、「習い始めたのは半年ちょっと前だな」とろっくんが答えると、「では麓郎は この半年で何を得た?」と尋ねました。
ろっくんは「え」と言葉に詰まり、またピリッとした空気が……
ろっくんが「何をって…… 射撃の腕と…… 上位勢の知識とか……」と曖昧に答えると、ヒュースは「……なるほどわかった とりあえず今の話で 麓郎と修のちがいは把握した」と言い切りました。
でも、次のページで「だが これを説明するのは気が進まない」と言い出しました。その理由は3つあり、「麓郎と修のちがいを説明してもおそらく麓郎には得るものがない」、「次に麓郎が精神的にダメージを負って選抜試験に影響が出る惧れがある」、「最後に犬飼と麓郎の今までの訓練をムダにする可能性がある」と説明。
「どんだけキツいこと言う気だよ……」と、心配そうな半崎くん。いい子だねぇ。
ここでろっくんは、「訓練をムダにする可能性がある」と言われ、自分の時間がムダになるかもしれないということよりも、「犬飼先輩の……!?」と、先輩の時間をムダにしてしまうかもしれないことを気にするんだよね。ろっくんもいい子だよね。基本、人がよくて義理堅い性格なんだよな。
そして、ヒュースは「麓郎の師は犬飼だ オレがこの先の説明をするなら 犬飼に話を通す必要があるだろう」と宣言。
次のページでは、早速犬飼先輩に電話してました。犬飼先輩はシャワー後の未セットの髪ですね! 何だか美人度が上がって見える…… 犬飼ファンは大変だったろうな。
犬飼先輩は共有スペースにいるようですが、ヒュースは寝室に移動。電話で言葉が通じなかった場合のために連れてこられた半崎くんが一緒。幸い、話は通じているようですが……半崎くん、便利に使われてるなぁ。
ヒュースは、犬飼先輩に「じゃあヒュースくんは おれの訓練の意味に気付いたんだ?」と言われ、「同じような訓練を受けたことがあるからな」と答えました。その訓練とは……やっぱり、ヴィザ翁につけてもらっていたんですかね?
訓練の意図は、通常の訓練と同時に会話や問答をして意識を分配することに慣れれば、目の前の敵を狙いながら敵全体の動きを追えるようになるということで、「中距離から戦況をコントロールするガンナーには特に意味のある訓練だろう」と付け加えます。
有識者の方々が指摘されていましたが、ラウンド8でヒュースくんが複数チームに囲まれて耐えていたとき、ヒュースが包囲を抜けられないように戦況をコントロールしていたのは犬飼先輩でしたからね。ヒュースは犬飼先輩を高く評価しているんですね。
ヒュースは「疑問なのはなぜそれを半年もの間 麓郎に伝えなかったのかという点だ 何か理由があるのなら オレが勝手に答えを教えるわけにはいかない」と言い、犬飼先輩に「ほんと律儀だねー」と評されました。ヒュースくんも義理堅くて真っ直ぐな性格ですからね。
犬飼先輩が説明しなかった理由は、「自力で気付いてもらいたかったから」ということで、その意図は、「今の麓郎に必要なのは 辞すんで考えることだと思ってるから」とのことでした。
自分の頭で考えることと外に知識を求めることは、どっちもバランス良く必要だけれど、麓郎くんの場合はかなり外に偏ってしまっていて、いろんな人にアドバイスをもらいに行っても、アドバイスを噛み砕いて受け止めるための器がないということだそうです。
器がないとはどいうことかというと、「自分で植物を育てたことがないから 花をもらっても種とか芽の形が想像できないみたいな……」と説明。そこのイメージの麓郎くんは、チューリップの鉢植えを抱えて「キレイダナァ…」と見ているのですが、(枯らして終わり)と注釈がついているんですよね。残酷!
半崎くんはその説明を聴いて「ほえー ファンシーっすね」との感想を述べていますが、ファンシーなのは絵面だけで、言われていることは結構キツいです。
犬飼先輩は、麓郎くんが自分で考えて動き出すのを待つつもりだったとのことですが、それで半年は気が長過ぎるのでは……
半崎くんは「いやいや遠回しすぎるでしょ ふつうに「自分で考えろ」って言えばいいじゃないすか」と言いますが、それも対する犬飼先輩の答えが「それが難しいんだ」。
いわく、麓郎くんは「自分で考えろ」って言われても「犬飼先輩が設定したこの問いの『正解』は何だろう?」と考えてしまう性格だというご指摘でした。
これは何となくわかる。麓郎くんに限らず、自分で考えることに慣れていない人は陥りやすそうな思考の気がします。そうやって正解探しをしてしまうと、永遠に自分で考えることにはならないんですよね。
しかしこれは、犬飼先輩がかなりしっかり麓郎くんのことを見てくれていて、理解してくれているという証左でもありますよね。いい師匠だ……
ヒュースは犬飼先輩の話を聴き、「そこまでの考えがあるなら オレが麓郎にあれこれ言うのは控えたほうがよさそうだな」と結論づけるのですが、犬飼先輩は「うーん…… ……いや 気にしなくていいよ」との答え。
その理由は、「遠征が決まればネタばらしする予定だったし それに…… ドラフトで麓郎がヒュースくんを選んだ時 ちょっと『自分で考えた』って感じがしたんだよね 自分で決めたことの結果を受け止めるって意味でも ヒュースくんにへこまされるのはいいかもね」ということでした。
確かに、麓郎くんがヒュースを選択することは迷った末に自分で決断したことで、『正解』を探した訳でもなく、上層部も予想外だったかもしれないですね。まあ、麓郎くんが臨時隊長に指名されたこと自体が、自分で考えて決めなければならない立場に置かれたということでもあり、選択順1番が最後に回って来たのも、そういう上層部の意図の表れだったのかもしれないですね。
さて、ヒュースは「どうなるかはわからんが……」と言いつつ、犬飼先輩にお礼を言って通話は終了となりました。
「へこむのは確定なのか……」と冷汗かいている半崎くんがかわいいね。

通話を終えた後も端末を見つめている犬飼先輩。その傍らにはカゲさんの姿が。
通話中、ずっとカゲさんも聴いていたってことですね。しかも、二人だけっぽい。ののさんはもうオペ部屋で、太一くんと柿崎さんは寝ちゃったかシャワーかかな?
無言で自分を見ているカゲさんに対して、「何?」と問う犬飼先輩。
カゲさんは「……俺ぁ半崎に賛成だぜ めんどくせぇことやってねえでわかるように教えてやれよ 師匠なんだろ」と、ムカついてるっぽい顔で言いますが……Tシャツの柄が緊張感をそぎますね。穴から顔だけ出しているので身体しか見えないアザラシ……(現代アートでこういうのがあったと思う。下から見るとこの状態ですが、梯子を上ると顔が見られるんです)。
それはさておき、このカゲさんの言葉に対する犬飼先輩の返答が、今回の一番衝撃的な言葉でした。
「おれがいなくなったらどうすんの」
この時の表情の繊細さも相まって、この1コマは話題をさらいましたね。
いなくなった師匠である鳩原さんに言及するコメントや、遠征先での自分の死を意識しているのかもしれないという指摘まで……
この表情を”はかなげ”と見る方もいらっしゃいましたが、静かな覚悟をたたえていると見る方も……
とにかく印象的な1コマでした。
カゲさんも、何か感化された様子。
そして、「一生面倒見続けるんじゃなくて 独り立ちできるようにするのが師匠でしょ 戦うときは独りなんだから」という犬飼先輩の言葉。
”戦うときは独り”というのは、チームやチームを越えた共闘を否定する訳じゃなくて、戦うときの決断は自分一人で考えて決めなくちゃいけないという意味ですかね。
やっぱり犬飼先輩は並々ならぬ覚悟を決めているような気がするな……

ヒュースから犬飼先輩の話を聴いた麓郎くんは、「オレは…… 何も気付かずに 犬飼先輩の時間を半年も無駄に……」と落ち込みます。それはもう、バックが真っ黒になっちゃうくらい深く。
でも、ヒュースに「この話を聞いただけでも 得るものはあったんじゃないか? これ以上オレが何か付け足す必要は……」と言われると、「…… いや……!」と力強く否定。
「ここまで来て退けねえよ……! 犬飼先輩に無駄骨折らせた分は ここで少しでも取り戻すしかねえんだ……!」と覚悟を見せました。よく言った、ろっくん!
こう言えるようになっただけでも、犬飼先輩が半年間待った甲斐があったというものですよね。いい師匠と弟子の関係は築けていたんだろうな。
そして、見守る半崎くんと日佐人くんの表情が対照的な気がしました。半崎くんは麓郎くんの言葉に意外そうというか心配そうなんですが、日佐人くんは麓郎くんの決断をよしとしている表情な気がします。ここまで隊長としての麓郎くんをフォローしてきたのは日佐人くんだもんな。感慨深いものがあるのかも。
ヒュースは「……… ……わかった 話を続けよう」と返しました。
ここで、以下次号です。

前号を読み終えた後は、いよいよヒュースから麓郎くんと修くんを比較した考察を聴けると期待したのですが、今回はあまりその点は進まなかったですね。
でも、今号も確かな満足。情報量が多い! 次号までたっぷり予想で楽しめますしね。

今号では、麓郎くんと修くんの違いに「自分で考える」ということがありそうだということが示唆されましたね。
提示された訓練を素直にこなしていた麓郎くんに対して、修くんは自分から「こういう訓練がしたい」と師匠であるとりまる先輩に申し出て、便宜をはかってもらったりしていた訳ですから。
それは作戦立案にも現れていて、その場その場で対応しようとして結局追いつかずに相手の作戦にやられてしまっている麓郎くんに対して、修くんは事前の情報収集から綿密な作戦を立てて、それがうまくいかなかった場合の対案もいくつか考えている感じですよね。
その他にも、いざと言うときの決断力とか、自分をよく知っていてそのうえで判断しているとか、いろいろと違いがあると思うのですが、ヒュースは何を指摘するのでしょうね。
次号も楽しみです。