2004.6.15 映画「ヒバクシャ 世界の終わりに」感想


 このページ、ものすごく久しぶりの更新になってしまいました。反省……

 2004年6月15日、仕事帰りに市内の公民館で行われた映画「ヒバクシャ 世界の終わりに」の上映会に行ってきました。
 この映画は世界中の核汚染の実態を描いたドキュメンタリー映画で、私がとても尊敬している被爆者医療に長年取り組んでいらっしゃる医師、肥田舜太郎先生が出演なさっています。この日は先生の講演もあるということだったので足を運んだのですが、会館の駐車場がいっぱいで、有料駐車場を探しているうちに遅くなってしまい、半分くらいしかお話しを聴くことができませんでした。残念です。


 映画では、主に三つの被爆問題が取り上げられていました。
 一つは、広島、長崎で被爆された方の現状。今も存命中の方のほとんどは爆心地より2km超離れた場所で被爆された方、爆発より後に身内を捜すなどの目的で爆心地近くに入って残留放射能で被爆された方で、多くの方が癌や甲状腺機能障害に苦しんでいらっしゃいます。肥田先生は現在88歳ですが、被爆者専門外来を開いてそういった方々の治療に現在でも取り組んでいらっしゃいます。ご自身も、28歳の時に原爆投下後の広島に入って二次被爆されたのですが、今も力強く核廃絶の活動をなさっています。
 もう一つは、劣化ウラン弾によるイラクの子供達の被爆の問題。湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾の放射能の影響と見られる子供の白血病の急増が取り上げられていました。このパートでは子供達とその家族の日常生活の映像が多く、淡々とした雰囲気だったのですが、テロップで2003年3月、米英軍のイラク侵攻で更に多くの劣化ウラン弾がこの地域で使用されたことが伝えられ、はっとさせられました。笑顔で映っていた子供達の中の誰かが爆撃で命を落としたり負傷したりし、誰かが白血病で苦しんでいるかもしれないのです。経済制裁のために充分な薬品もない状況で。
 もう一つは、アメリカの核開発施設の周辺住民の健康被害の問題。第二次世界大戦当時からの長年に渡る核兵器開発、原発建設、核実験により、施設周辺の住民の多くが癌や甲状腺機能障害を患い、女性の流産、奇形児の出産も多くなっているとのことでした。亡くなる方も多く、国に保障を求める訴訟の原告は、当初8,000人だったのが16年間で1,600人に減少しているとのことです。(この訴訟は2003年に棄却されているそうです) にも関わらず、施設に関係する人達やその家族は核開発の町の住民であることを誇りとしてさえいて、学者は人体に影響はないことがデータで証明されていると豪語しています。しかし、放射性廃棄物は漏れ出ており、その浄化は進んでいません。しかも、その周辺には広大な農業地帯があり、そこからジャガイモや牛肉が日本に向けても輸出されているのです。
 これらの被爆問題の共通点は、低線量放射線による被爆であり、放射線を受けた量や当人の年齢、性別、免疫機能の状態などにより、様々な症状が現れるということです。それゆえ、被爆者の医療についての教育を行ったアメリカのボードマン医師は「非定型症候群」と表現しています。また、現れる症状は癌や白血病、甲状腺機能障害など、被爆以外の原因でも発症するものであるため、因果関係の証明が難しくなっています。ですが、これだけの事例があって無関係と言えるでしょうか?
 また、終わりの方で肥田先生が調査なさった統計資料のことが取り上げられていました。日本の都道府県毎の乳ガンによる死亡件数の推移をまとめた統計によると、北海道、東北及び日本海側の地域で、1996年頃から乳ガンによる死亡が急増しているそうです。その十年前、1986年にはチェルノブイリの原発事故がありました。放射能汚染物質が気流に乗って移動し、離れた地域でも健康被害を生じさせている可能性があるのです。

 核汚染の1日も早い根絶を願ってやみません。

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