7月27日
富良野へ行きました。
夜 札幌に着いたら落ち合う約束になっていたNさんご夫妻と連絡がとれて、
「富良野に行くなら 拓真館へいったほうがいい」と言われました
ガイドブックや地図には書いてありましたが、それほどのものとは思わなかったので 予定には入れてありませんでした。
しかし、オトナのNさんがそこまで言うのなら これは行くほうがいいと思って行ってみたのです。
途中で ラベンダーの花畑に寄り道しながら走りましたが、一歩国道から入ってみると
地図を見ながら悪戦苦闘。
一本道と 升目の町しか走っていなかったので、くねくねした道が交差している富良野の畑の中の道は
まるで迷路でした。朝からUターンを二回。迷いながらも 景色は楽しんで走ります。
どこにいるのかわからなくなってきたので 目に前の喫茶店に入って 道を教えていただきました。
訊いてみると そこからは一本道で、わかりやすい目印も教えてくれたので まもなく拓真館に到着しました。
観光バスがたくさん止まっている駐車場の前にバイクを停めると、
係のおじさんが バイクをもう少し詰めて停めるようにと言いにきました。
おや、ここはこのおじさんたちの管轄の場所? じゃあ有料かな?
でも、駐車場のおじさんきいてみるとに「バイクからはお金は取れないさぁ」と言われました。
詰めて停めるのは、バスの出入りのじゃまになるからで、本来ここはバイク置き場じゃないんだそうです(汗)
ご、ごめんなさい。 それにしても欲がない。じゃあ半額ね、とかって 急に決めて言うところもあるのにねぇ。
拓真館の中は かなりの人でにぎわっていました。観光バスの集合時間に遅れないように、急いで見て回っている人ばかりです。
私たちはゆっくり見て回りました。
ここの写真館を作ったのは 前田真三さん。去年の秋に76歳でなくなったカメラマンのおじさんです。
やさしい顔で庭に立っている写真が玄関を入るとすぐに見え、
「ここはほんとうにきれいなところでしょう?」と言っている気がしました。
最初に見たのは 白樺の ちいさな並木道の写真でした。
白い幹の足下に黄色い花がふわふわと咲き乱れて
赤毛のアンが見たら叫びだしそうな きれいな色でした。ソフトフォーカスで撮った
明るい風景の写真。
このとても優しい写真を撮ったおじさんはもういないのだと思うと
なんだかとても寂しくなってしまいました。
私が生まれる前から 富良野の写真を撮り続けて、ついには住み着いてしまったのだそうです。
今では有名な「富田ファーム」のラベンダー畑の 30年ほど前の写真も、
「そのころにはラベンダー農家は富田さんのお宅 たった一件になってしまっていた」という
キャプションとともに展示してありました。
日本の経済が高度成長期になって、香料としてのラベンダーの需要が 人工香料におされてしまい、
もともと富良野にたくさんあったラベンダー農家の経営が苦しくなってしまったのだそうです。
富田ファームは そのころからの唯一の生き残り。
そこまでにはたくさんの苦労があったことでしょう。
何十年経っても色あせることのない うつくしい風景の写真。
前田さんの家の庭は 花畑という形の「スタジオ」になっていて、
近くの小学校や近所の人の家、畑、山、そういうものがそこにはありました。
その後行った富田ファームも、「ラベンダーを残したい」という一心で 畑を守っていたら
大きな美しい風景になっていた、そんなところでした。
「うちの花たちを見てください、こんなにきれいにがんばって咲きました。きれいでしょう?」そういう所のように感じました。
きれいな花をきれいに見てもらいたい、そう思って作ったところだから あんなにきれいな場所に見えるんだと思います。
べつに、見に行って帰ってくるだけならタダです。駐車場も、入場も一切無料。
これは、拓真館も富田ファームも同じでした。
「せっかくこんなにきれいなんですから、見てください」そういう場所でした。
拓真館のポストカードだって 12枚で600円。
ちょっときれいな写真のポストカードを雑貨屋さんで買ったら 一枚150円はします。
有名フォトグラファーなんだから、一枚200円だっていいかもしれません。なのに、一枚あたり50円。
たくさん売れるから儲けはある、ってそういうことじゃないと思います。
私が写真を撮るとき いちいち難しいことを考えてしまうのがいやで、撮らなくなってしまったのです。
「これを撮ってどうするんだろう。」「これはきれいだといわれるだろうか。」「つまんない写真になってないだろうか。」
むかしは 人間のいない風景写真が一番つまらないと思っていたんですが、最近は ごちゃごちゃとした人間を撮るよりも
純粋で美しい風景をとれたらいいなあと 思うようになっていました。
少なくとも、そういうものを素直に美しいと思える気持ちでいたいと思います。
夜には 札幌でNさんご夫妻と合流。夕飯もごちそうになり、タクシーで夜景を見に行き(これもお世話になりました)
まるで両親のように面倒を見ていただきました。おまけに、持ってきたけれど一度も出さなかった「防寒グッズ」を
Nさんの車で 群馬まで持ち帰っていただきました!!!
すすきのの夜は 聞きしにまさって賑やかでした…。