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▼『偶然の旅行者』の作品データ▼
#08.ガイドブック  (1999.10) 
 今年は暑さがいつまでも続き、10月に入ってやっと涼しくなりました。この季節は、秋の行楽シーズンですね。旅行の計画を立て、楽しみになさっている方も多いのでは?

今回は、『偶然の旅行者』からの小道具を取り上げてみます。

□□□メーコン(ウィリアム・ハート)は旅行「ガイドブック」の著者。彼の視点を元にした旅行の心得を書いた「ガイドブック」が好評だ。□□□

「ガイドブック」の内容のひとつ、旅行の持ち物については、小袋入りの洗剤・携帯用しみ抜き。(クリーニングしなくて済む)グレーのスーツ1着。(TPOを問わず着ることができる)雑誌ではない本を1冊。(他人の干渉を避けるため)などの記述があります。しかし、この「ガイドブック」はメーコンの人嫌いを表している部分も多いのでした

□□□12歳の息子イーサンを亡くしてから彼の妻サラ(キャスリーン・ターナー)とは、夫婦間の気持ちに溝が出来ていて、サラの希望により、二人はしばらく別居することになる。メーコンの家にはイーサンの可愛がっていたエドワードという犬がいるが、取材旅行の間、メーコンは犬猫病院にエドワードを1週間預けることに・・・。そこで犬の調教師、ミュリエル(ジーナ・デイビス)と出会う。□□□

ミュリエルは、7歳になる息子アレクサンダーと二人暮らしをしています。人付き合いの苦手なメーコンは、はじめのうち、あまりにも妻と違うタイプの女性であるミュリエルに戸惑いを感じますが、次第に彼女の屈託のなさに惹かれてゆき、やがてミュリエル、アレクサンダー親子と一緒に暮らすようになりました。

□□□一見、楽しい生活を送っているかのように見えるメーコン達だが、イーサンを失ったメーコンの心の傷は癒えることがなかった。どうしてもミュリエルとの結婚に踏み切る勇気が持てないメーコンは、ミュリエルの家を出て、再びサラとの生活に戻る。□□□

「旅に出る人は旅先の事を思い描き、旅人は自分の家を心に描く。」これは、メーコンの「ガイドブック」に書かれている「旅行者の心境」です。サラとミュリエルとの狭間で揺れ動くメーコンの気持ちもまた、この「旅行者の心境」に似ていました。

□□□パリ取材の際、メーコンは彼を追ってきたミュリエルと再会する。時を同じくして、体調を崩した夫を心配した彼の妻サラも、パリへやってくる。ますます揺れ動くメーコンの心。□□□

最終的にメーコンが選ぶのは、妻、サラとの再出発なのでしょうか?それとも、過去の自分を捨て、ミュリエルとの未来を歩き始めることでしょうか?この作品は、メーコンの生き方を旅にたとえているようです。どんなに優れた「ガイドブック」を持っていても、そしてその「ガイドブック」をどれほど熟読しても、ひとりひとりの人生の旅には、アクシデントがつきものだと思います。

旅行「ガイドブック」の著者であるメーコンも人生の旅では度々アクシデントに見舞われ、何度も迷子になってしまいました。でも、自分の生き方を決めるのは、「ガイドブック」ではなく自分自身。迷った末に生き方を見つけたメーコンがラストで見せる笑顔は素敵です。
旅行の「ガイドブック」はとても便利だし、為になりますが、あまり頼り過ぎては人まかせの旅行になってしまうかもしれません。旅先では自分の目で見て、考えて・・・。実際に体験することから生まれる発見も旅の醍醐味なのではないでしょうか?

 メーコンの飼っている犬、エドワード。『恋愛小説家』に出演した犬のバーデルと並んで芸達者!でした。(ジーナ・デイビスの調教ぶりも小気味いいです。)『メリーに首ったけ』に出演したギプス犬のパフィーもなかなかのものですが・・・。(次点)
それからメーコンの出版担当者ジュリアン(ビル・プルマン)やメーコンの兄妹たち、ラリー家の人々(兄妹揃っての社交嫌い&方向音痴) も面白かったです。作品中、この兄妹でやっていた“ワクチン・ゲーム”というゲームがとても楽しそうで、私も参加したくなりました。

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