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▼『グロリア』の作品データ▼
#11.フライパン  (2000.1)
 新しい年になりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。今年から始まった、ひとつめのハッピー・マンデーも終わり、そろそろお正月気分にもさよならという感じです。3学期もスタート。慌ただしい朝の再開ですね。朝食の支度、急いでいるときには「とりあえず、フライパンで目玉焼き!」「これで一品OK!」なんてやってるのは私だけでしょうか?(笑)

映画の中には朝食シーンがよく出てきますが、(その準備も含めて・・・。)今回は、今まで観た中で最悪の目玉焼きが登場する作品、ジョン・カサベテス監督作品(=リメイクじゃない方!)の『グロリア』を取り上げます。

□□□グロリア(ジーナ・ローランズ)がいつも通り、パジャマの上にガウンをはおった姿で同じアパートに住む親友宅へコーヒーを飲みに行くと、その部屋には、普段とは異なり、殺気立った雰囲気が漂っていた。親友の夫は、マフィアの会計をしている。だが、長年に渡る会計不正行為と、マフィアの秘密をFBIに流してしまった報復として、今、彼の家族全員が命を狙われていた。□□□

□□□アパートの入口には、既にマフィアの雇った殺し屋が到着しており、一刻を争う時の中で、グロリアは親友の子供、フィル(ジョン・アダムス)を託された。高級なウンガロの洋服を身にまとい、猫と暮らす独身の女。細いヒールと煙草がやけによく似合うグロリアは、実は子供嫌いだった。しかし、生死の境で半狂乱となっている親友の頼みは断れない。嫌がる子供を連れて、グロリアの自室へ戻るとすぐに、親友一家の部屋は爆破され、グロリアの元に6歳のフィルだけが生き残る。彼は、マフィアの秘密を書き留めてある父親の手帳を抱きしめていた。□□□

マフィアのボスの愛人であったグロリアが組織に逆い、組織の秘密を握っている手帳とフィルをかばうのは、彼女までもがマフィアから命を狙われることを意味します。

□□□こうしてグロリアとフィルの逃避行は始まった。ふたりの生活・・・、慣れない手つきでフィルの食事を作ろうとするグロリア。「フライパン」に卵を割り入れただけの目玉焼きらしきものは、油をひかなかったためか、火加減によるものか、「フライパン」にこびりついてはがれない。軽く舌打ちして、グロリアはその「フライパン」をゴミ箱へ投げ入れる!フィルにはミルクの入ったコップだけが手渡された。(笑)□□□

幾度となく身に降りかかる危険を避け、一度はフィルから離れようとしたグロリアなのに、どうしてもフィルを見殺しにするわけにはいきませんでした。ふたりで転々とするうちに、グロリアはフィルと親子として暮らしたいと願うようになっていたのです。

□□□ある日、グロリアがフィルに「私が(あんたの)ママになるって話は...?」と何気ない素振りで問いかけると「ママになってもいいよ。(僕の本当のママは死んじゃったし、グロリアは)僕にとってママで、パパで、家族で...親友で...恋人でもいいよ!」とフィルが答える。グロリアは「親友がいいわね。」と一言。どこへ逃れようとしても、敵ばかりが目に入る状況で、孤独なふたりの心がしっかりと結びつく、とても温かなシーンだ。□□□

『グロリア』は『レオン』と並び称されることが多い作品でもありますが、この作品ではジーナ・ローランズと子役との会話が洒落ていて面白く、また緊迫した展開の中、ふたりの会話や行動には巧みに伏線が張られているので、自然な気持ちで(ふたりを応援しながら)ストーリーへ引き込まれていきます。さらに『レオン』に比べると、希望あるエンディングです。最終的に堅気な暮らしを選んだグロリア。あの後、フィルを育ててゆく為に再び何個ものフライパンを焦げ付かせたのかもしれませんね。

(故)ジョン・カサベテス監督とジーナ・ローランズは、実生活上のパートナー。同監督作品には、ジーナ・ローランズを撮ったものが数多く残っています。そして、この二人の息子であるニック・カサベテスも役者、監督としての道を歩んでいます。ジーナ・ローランズは円熟味を増し、最近では味わい深い母親&祖母役としての出演作もありますが、これからも切れがよく・独特な温かさのある演技を見せて欲しいです。

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