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▼『悪魔のような女』の作品データ▼
#15.スーツ (2000.6)
 梅雨ですね。アジサイの花も満開に近づいてきました。こんなに雨の多い時期だけど、子供たちにとって6月はプール開きの季節でもあります。

今回は、 タイトルバックに雨の日の水たまりを使った作品、1955年のフランス映画、『悪魔のような女』 を取り上げてみます。この映画では学校のプールも重要な鍵を握っているのです。

□□□私立学園の校長ミシェル(ポール・ムーリス)には、資産家の妻、デュラサール夫人(ベラ・クルーゾー)がいるが、女教師のニコル(シモーヌ・シニョレ)という 愛人もいた。しかし、ミシェル は暴君で、陰険な男だったため、いつしか彼の妻と愛人はミシェルの存在を疎ましく思うようになっていた。□□□

学園は、3日間の短い休日を前にして子供たちも教師すらも自然と浮き足立っていました。その中で、もっとも落ち着かないのは、デュラサール夫人と愛人ニコル。二人の女 は、疎ましい存在であるミシェル に対して殺意を持って おり、休暇中の小旅行を装い、ひそかにミシェル殺害を企んでいました。

□□□ニコルの故郷、ニオールの町。とても大きな蓋付きバスケットを車から部屋へ運び込む女たち。ビニール製のテーブルクロス・酒・灰皿・コップ・・・それから睡眠薬の入ったガラスビン。準備は万端だ。デュラサール夫人が電話で、夫に離婚話を持ち出した為、慌てたミシェルは今頃、ニオールへ向かっているはず。□□□

ふたりが立てた殺害計画とは、睡眠薬を混ぜた酒をミシェルに飲ませ、彼が寝入ったところでバスタブに沈めて窒息死させるというものです。その夜遅くなってから、計画通りに事は進み、グレーの「スーツ」を着たミシェルはバスタブの中で息絶えました。ニコルとデュラサール夫人は、再び大きな蓋付きバスケットを車に積み、学園へ戻って行きます。もちろんバスケットの中には、ビニール製テーブルクロスに包まれたミシェルの遺体が。やがてのこと、遺体は女たちによって学園のプールへと移され、あとは誰かにミシェルが発見されるのを待つばかりの日々。

□□□だが予想に反して、 遺体はプールから忽然と消えた。それだけではなく、死んだミシェルが生き返ったかのような不思議な出来事が連続して起こり始める。女たちを驚かせたのは、グレーの「スーツ」だった。バスタブの中で死亡した時にミシェルが着用していた「スーツ」。殺した側の目に焼き付いたまま決して離れないものである。グレーの「スーツ」は、きれいにクリーニングされ、主人・ミシェルのいない部屋(=デュラサール夫人の部屋)へと届けられた。恐怖におののく二人の女。恐ろしさに耐えきれず学園を立ち去るニコル。また、心臓疾患の持病を持つデュラサール夫人の容態は悪化する。□□□

ハンガーに吊されただけの「スーツ」の役目。殺された人の着ていた洋服が、逆に殺した犯人を恐怖に陥れるなんて!?「どうして?どうやって?誰が?いったい?」と、真相が知りたくてウズウズしていると、ラストに待つ大どんでん返し。ラストの数分間で、思わず「あっ!」と言わされることでしょう。しかも誰が一番恐くて悪魔のような人間なのかは、最後の最後にわかるようになっているのです。

□□□アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督って、ホント楽しませ方がうまいなぁ・・・。□□□

最近、映画界で大流行のどんでん返し劇。この映画も例外ではなく、1996年にアメリカで同タイトル映画としてリメイクされています。(=シャロン・ストーン&イザベル・アジャーニ&キャシー・ベイツなどが出演)

 水浸しの「スーツ」で思い浮かべるのは、『グラン・ブルー』のパーティーシーン。二人の男が「スーツ(タキシードかな??)」姿のままプールに潜って酒を酌み交わします。更に連想してみると、プールに潜ってまでお酒を飲むのは、ニコラス・ケイジ。『リービング・ラスベガス』での愚かな 1シーンも忘れられません。

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