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▼『カーリー・スー』の作品データ▼
#09.タイツ  (1999.11)
 11月になりました。「七五三」の季節ですね。今月の上旬から中旬にかけて神社の近くを通りかかると、綺麗な着物を着た女の子や、華やかなワンピース姿の女の子、スーツに身を包み、革靴をはいた男の子の姿を見かけます。

今回は、子供が主役の作品。『カーリー・スー』からの小道具、「タイツ」についてです。

□□□ビル(ジェームズ・ベルーシ)とスー(アリサン・ポーター)は、気の合う2人組。だがこのふたりは本当の親子ではない。スーは赤ちゃんの時に母親に捨てられ、その後はずっと、ビルがスーを育ててきたのである。しかし、ビルは定職を持たず、スーは学校へ行っていない。いつもお金に不自由しているけれど、ふたりは仲良く、その日暮らしの気ままな生活を送っていた。ある日、ビルとスーは、 その晩の夕食にありつくため、交通事故に見せかけた詐欺まがいの行為をして、独身の美人弁護士、グレイ(ケリー・リンチ)と出会う。□□□

グレイは、頭の切れる一流の弁護士ですが、一見、人をよせつけないような冷たい感じを与える女性でした。汚い身なりのビルとスーに対する態度も、またしかり。それなのに何の因果か、グレイは再びビルを車ではね飛ばしてしまい・・・、今度は、ビルとスーを自宅に泊める羽目に陥ります。

□□□グレイの住まいは、豪華なマンションの一室。大理石風のエントランス。機能的なキッチン。グレイの洋服や装飾品がきちんとしまわれているクローゼット。しかも、一人暮らしなのにゲスト用寝室が2つもあるのだ。見たこともないような大きな部屋に来て、スーは驚く。いい匂いのする、真っ白なバスローブ・バスタオル・シャンプー。スーにとってはプールみたいに見える立派なバスタブなど。バスルームでもスーは好奇心いっぱいだった。(ここでハンドタオルを持ち帰ろうとする、しっかり者(?)のスー。/笑)□□□

ビルとスーの滞在中、ふたりの言動にげんなりしながらも、グレイは不思議と明るい気持ちになっていました。また、彼女はスーの様子を観察しているうちに、ビルとスーが本当の親子ではないことに気付きます。スーの生い立ちや事情をビルから聞いたグレイはスーの面倒を見ようと決心します。(定職のないビルには、スーを養女として迎えることができなかったのです。)

□□□ビルはスーと離れたくない一心で、仕事を見つけてくる。喜んだグレイは、 ビルとスーに よそいきの洋服と靴を贈り、一流のレストランへ出掛けることに・・・。グレイは彼女の女友達と二人がかりで、スーをピカピカに磨き上げ、長い髪を丁寧にすいてやる。グレイのプレゼントした洋服に着替えたスー。見違えるほどの可愛い女の子。が・・・・・、スーは「タイツ」など、はいたことがことがなかった!もちろん革靴だって・・・初体験。「タイツ」の感触を嫌がり、「かゆいよ〜。これ何でできてるの?」バスルームの前で寝転がってジタバタするスー。□□□

私はこのシーンを観て、大人にとっては当たり前に思えることが、子供にしてみればとても疑問に思えたり、時にはそれを押しつけられるのが嫌だったりするのだと感じ、少し反省させられました。そういえば、幼い子供に「タイツ」をはかせると、あちこち引っ張って嫌がることがありますね。やはり、あのピタッとした感触に馴染むのには時間がかかるのでしょう。

□□□この作品中、ビルとグレイとスーが3人で 無銭デートをするシーンもある。見ず知らずの人達が大勢集まっている、誰かの披露宴会場で食事し、でたらめなスピーチをして、乾杯の音頭をとったり、映画館に潜入して、隣の人が持っているポップコーンを回し食べたり、さらにはその人の持っていたコーラまでもいただくといった・・・。お堅いイメージのグレイが指笛を吹いてしまうほどリラックスした楽しい雰囲気だ。□□□

そして最後の場面。グレイの養女として暮らす事になったスーザン(=スー)の姿が大写しになります。ここでのスーは、学校へ行く服装ですが、当たり前に白い「タイツ」をはいています。にっこり微笑むスーだけど、私はなんだか淋しくもありました。白い「タイツ」、清潔で上品な暮らし。ビルとグレイに囲まれて、スーが幸せに暮らしていくことを予感しながらも、私は、それまでビルと送った貧乏生活の中でスーが見つけていた、あのささやかな幸せも決して忘れないで欲しいと願わずにはいられませんでした。

 「タイツ」という小道具で思い浮かべたのが、こちらもスーのお話、『ペギー・スーの結婚』。結婚生活に嫌気のさしている中年女性が、過去(ハイスクール時代)へタイムスリップし、もう一度自分の人生を見つめ直すという物語です。主人公のキャスリーン・ターナーは、昔の生活を懐かしく感じますが、片足ずつに分かれている「タイツ」の不便さを思い知ります。そこで、両足分の「タイツ」2つを縫い合わせ「現代風のタイツ(ストッキング)」を作ってしまうのでした。(しかも過去の世界で大ヒット商品となる!)
 P.S.キャスリーン・ターナーの夫役としてニコラス・ケイジの姿も見られます。

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