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▼『ゴーストワールド』の作品データ▼
#28.似顔絵 (2002.10)
 暑かった夏が終わり、秋の気配が増す今日この頃。くもりなく晴れた午後の空は高くて青く、とても美しいです。

今回は『ゴーストワールド』について書いてみます。ラストシーン。青い空が夕闇へ変わる瞬間、1台のバスがゆっくりとどこかへ消えて行きました。

□□□イーニド(ソーラ・バーチ)とレベッカ(スカーレット・ヨハンスン)は気のあう幼なじみ。高校の卒業式を終えたら、それぞれの家を出て一緒に暮らす計画を立てている。□□□

子供の頃からハイスクールを卒業するまで、ずっと行動を共にしてきたイーニドとレベッカは、相手の性格・趣味・暮らしぶりなど互いに知り尽くした仲に見受けられました。ちょっとしたイタズラを思いつくまでは・・・。

□□□ことあるごとに他人のイケてない言動を笑いの種にしていた彼女達。暇つぶしに入ったダイナーで新聞の小さな広告(交際希望欄?)記事に目を留めたふたりは、その依頼主である「緑のカーディガン男」をカモに決め、男の留守電へ思わせぶりなメッセージを残す。□□□

数日後、同じダイナーへあらわれたのがシーモア(スティーブ・ブシェミ)。シーモアは、見るからに女性に縁のなさそうな男性で、イーニドとレベッカの企みどおり、彼はたっぷり「まちぼうけ」を食わせられました。いつもならば、また別のネタ探しへと移ってゆくはずなのに、イーニドはシーモアに何か特別なものを感じたらしく、急に「家まで尾行しよう!」と言い出します。

古いレコード(ブルース)の収集をはじめ、シーモアのアパートの一室(趣味の部屋)はイーニドの想像を裏切らないどころか、はるかにオタク度が高く、魅力的であり、心惹かれる物たちであふれていました。

□□□以降、さすがのレベッカでも呆れるほどイーニドはシーモアへ執着を示すようになり、仕事に就いたレベッカと過ごす時間よりもシーモアといる時間の方が大切になってゆく。世間一般では「全然イケてないシーモア」が、イーニドにとっては「いなくてはならないヒーロー」へと変化していたのだった。□□□

みずから望んだシーモアとの関係を断ち切り、レベッカとかわした約束さえも反古にして、イーニドが生まれ育った町を去る直前まで片時も手離さなかった彼女の絵日記には、レベッカと笑い転げたネタやカモ・ひそかに好きだったジョシュ(ブラッド・レンフロ)の顔・美術補習の宿題など、さまざまな絵が描かれていました。

□□□もちろん、シーモアと出会ったダイナーの出来事も、イーニド流のギャグ漫画になっていた。□□□

□□□シーモアはイーニドと話し合うためレベッカの借りたアパートへやってくる。ところが部屋にイーニドの姿はない。レベッカがイーニドの荷物から探し手渡した絵日記を見てシーモアは初めて自分がイーニド達の仕掛けたイタズラにまんまとひっかかり、笑い者にされていたことを知る。大きなショックを受けたシーモアは、ジョシュが働いているコンビニで暴れ(ようとするが、マッチョな常連客に取り押さえられ)ケガを負い入院してしまう。□□□

イーニドが絵日記を抱えてシーモアを見舞う場面・・・。諦めと怒りの混ざった複雑な表情でイーニドを迎えたシーモアが見たものは、彼の「似顔絵」でした。それは絵を描くことが好きなイーニドが、シーモアとの出会いから現在までを彼女なりのイマジネーションを使って綴った本心だったのでしょう。すごく短いけれど濃密な日々の名残りが、絵日記をめくる度ハラハラと舞い落ちていきました。

□□□驚きをかくせないシーモアに優しく語り続けるイーニドだったが、バスの出発時刻はどんどん迫っていた。□□□

同作を観終わって以来、私が引きずっている想いを、どうしてもうまく言葉にすることができなくて、その想いは、いまもって昇華されず胸にとどまったままなのですが、【イーニドの存在=シーモアの心象風景=ゴーストワールド】という見方はいかがなものでしょうか?(ってことは・・・「似顔絵」もシーモアの想像の産物?う〜〜〜むむむ。それじゃ「自画像」じゃないか!?/謎。)

『ゴーストワールド』の結末は、ご覧になられる方によって幾通りもの解釈ができるだろうと、私は思います。


 主演のソーラ・バーチは子役時代から活躍しており、特に『アメリカン・ビューティー』の娘役が有名です。またレベッカ役を演じたハスキーボイスのスカーレット・ヨハンスンは2002年10月現在、弱冠17歳とのこと。今後がとても楽しみな若手女優さんたちです。

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