はじめに
日本キリスト改革派教会の役員は、教師(牧師は教師の中の1つの職務)、治会長老、執事の三つです。ここでは、主として教会員が治会長老または執事に選ばれて、任職・就職するときの要件についてまとめてみます。
※教師も「御言葉に仕える長老」として、長老の一種ですが、教会で単に「長老」と呼ぶ場合は、ふつう治会長老のことを指しています。
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治会長老 |
執事 |
職務 | 牧師と共に教会を治める指導者 | 愛の奉仕の業を行い、教会の維持管理に努める役員 |
資格 | 健全な信仰を持つ教会員。男子。 (詳しくは政治規準54条) |
健全な信仰を持つ教会員。男女。 (詳しくは政治規準57条) |
選挙 | 会員総会での投票で選出され、長老候補者となる。 | 会員総会での投票で選出され、執事候補者となる。 |
準備 | 長老として必要な学びをする。 | 執事として必要な学びをする。 |
試問 | 小会または中会特命委員会による試問。 | 小会または中会特命委員会による試問。 |
任・就職式 | 本人の誓約、教会員の誓約、按手 | 本人の誓約、教会員の誓約、按手 |
治会長老となる。(任期あり) 牧師と共に小会を構成する。 | 執事となる。(任期あり) 執事会を構成する。 |
治会長老・執事の任職と就職の誓約 (政治規準付則2の十)
- あなたは、旧・新約聖書が神の言葉であり、信仰と生活の唯一の誤りなき基準であると信じますか。
- あなたは、私たちの教会の信仰基準を、聖書の真理を体系的に示すものとして誠実に受け入れますか。
- あなたは、私たちの教会の教会規程に従うことを誓約しますか。
- あなたは、神の恵みによってこの職務に召されたことを確信し、神とキリストの教会への愛によって、この職務を遂行することを誓約しますか。
- あなたは、いかなる場合にも、教会の純潔と一致と平和のために努力することを誓約しますか。
- あなたは、今、この教会の治会長老(執事)の職務に就こうとしています。あなたは、その任務を忠実に果たし、生活において福音の告白を飾り、託された人々の前に、敬虔の模範となるように努力することを誓約しますか。
(治会長老に対し)- あなたは、牧師及び先任の治会長老と共に、小会議員として忠実に教会を治め、群を見守り、与えられた権能を正しく行使することを誓約しますか。
(執事に対し)- あなたは、主イエス・キリストの模範に従い、聖徒の交わり、特に乏しい者との交わりにおいて同情と奉仕をなし、また教会の維持のために努力することを誓約しますか。
誓約を満たすための概略の知識と心構え
誓約の1を満たすためには、先ず旧・新約聖書を十分に読みこなし、信仰と生活の規範として信頼を寄せていることが大切です。その上、ウエストミンスター信仰告白の第一章に記されているような独自な聖書観に根ざしているという自覚が必要でしょう。
誓約の2.3.は、日本キリスト改革派教会の憲法の問題です。憲法は次のとおりです。
日本キリスト改革派教会憲法 (1)信仰基準 ●ウエストミンスター信仰告白 ●同大教理問答 ●同小教理問答 (2)教会規程 ●政治規準 ●訓練規定 ●礼拝指針 私たちが洗礼、加入などで教会員になる場合の誓約では、直接的に問われることはありませんが、教会役員になる場合には、きわめて重要な誓約事項となります。
信仰基準は、教会での説教や教育や生活が、教理的に適正であるか、あるいは偏っているかを判断する大筋の基準となりますので、役員たる者は、常に座右に置いて学ぶことが大切です。
※なお次の二つも、信仰基準ではありませんが、信仰教育上有益なものとして大会で認めています。合わせて読んでおくとよいでしょう。
●ハイデルベルク信仰問答 ●ジューネーブ教会信仰問答教会規程は、改革派教会の大きな特長となっている、いわゆる「長老主義」の教会政治を具体的に展開するための取り決めです。教会政治とは教会を治めていくためのシステムのことですが、一般に旧・新教を含めて、@監督制 A長老制 B会衆制の三つの型があるといわれます。私たちの教会では、長老制が最も聖書の示す秩序にかなったものとして採用しているのです。教会規程は、座右において、いつでも参照できるようにしておく必要があります。
誓約の4は、教会役員は誰によって任命されるのかという自覚です。手続きとしては、会員総会で教会員の選挙で選ばれ、小会あるいは中会特命委員によって任職・就職式が行われるわけですが、真の任命者はイエス・キリストであることを自覚しなければなりません。この召命感が問われているのです。
誓約の5.6.は、教会役員として教会員の前に、公的および私的に努力することを表明する誓約です。ただ抽象的にまた心情的に誓うのではなく、政治規準55条(治会長老の任務)58条(執事の任務)などを念頭において、教会の建徳となるように振る舞わなければなりません。
(治会長老に対し)誓約の7は、牧師と共に複数の長老が小会を構成し、法治権、議会権能を行使する心構えです。政治規準13章がその根拠となります。小会は各個教会の最高機関であって、小会の運営が的確に行われるか否かが教会の盛衰を左右する要となります。
なお、治会長老は、中会、大会の議員となり、会議や各委員会の働きに連なる場合もありますから、対外的に開かれた視野とバランス感覚をもって職務に当たる必要があります。(執事に対し)誓約の8は、執事の働きについての心構えです。政治規準58条の任務の他に執事会を構成する組織的な働き(59条)があります。執事会は小会のような法治権はなく、具体的な目に見える形の奉仕がその特質です。また、対外的に大・中会と関わりをもって働く場もありますから、一教会だけにとらわれない開かれた視野が大切なことは長老の場合と同じです。
参考資料 (教会の書棚にあるようなものをあげます)
聖書、
ウエストミンスター信仰告白、
ウエストミンスター大教理問答、
ウエストミンスター小教理問答
ハイデルベルク信仰問答、
ジュネーブ教会信仰問答
教会規程(政治規準、訓練規定、礼拝指針)
聖書注解、聖書辞典、コンコルダンスなど、
信仰告白、信仰問答解説書
教会規程の解説書や記事
例:宮田計著「政治規準の学び」(中会文書委員会)
R.Bカイパー著、「聖書の教会観」
カルバン著、「キリスト教綱要」
長老試問例
あなたは長老としてどれだけ答えられますか? (「まじわり」第25号掲載記事より)
- 教会の本質はなにか
- 教会の頭(かしら)はだれか
- 真の教会の標識は何か
- 見える教会の構成員は
- 教会権能の性質と種類は
- 教会政治の種類をいえ
- 長老政治の特徴は
- 長老の権威は誰から受けるか
- 委員と長老の違いをいえ
- 治会長老としての個別的・共同的職務をいえ
- 長老と牧師の職務上の関係は
- 教会員との職務上の関係は
- 教会財務に対する長老としての責任は
- 改革派教会の長老として他教会(派)に対する考えを問う
- 洗礼の中心的意味は
- 聖餐式はなぜ必要か
- 洗礼・聖餐を軽視する者への監督はどうするか
- 牧師が説教と牧会に専念できるために長老はどのように配慮すべきか
- 説教に教理上の誤りが入り込まないよう監督するのに長老はどのような努力が必要か
- 教会の定期集会出席について心に決めていることを問う
- 大会・中会への出席の心構えと準備を問う
- 政治規準と大・中会記録を読んでいるか
- 長老としての召命感を問う
- 召命はどの教会に対して召されていると考えるべきか
- あなたは教会員を愛しているか
- あなたは牧師を愛しているか
- あなたは教会の地域民を愛しているか
- 教理と実践の唯一の基準は何か
- 聖書は主に何を教えるか
- 旧・新約聖書を何回通読したか
- ウエストミンスター信仰告白・大小教理問答、ハイデルベルク信仰問答、ジュネーブ教会信仰問答、キリスト教綱要(カルヴァン著)を読んだか
- 罪とは何か
- 異教社会に生活する者として偶像問題にどう対処するか
- 家庭礼拝をどのように守っているか
- 自分自身のデボーション(聖書を読むことと祈りの時間)はどうしているか
◆ある教会での中会特命委員の試問です。もちろん一人一人に35問全部を質問したのではありません。
宗教法人について
●松戸小金原教会は、1994年に宗教法人を設立し、千葉県の認証を受けています。
法人の名称: 「日本基督改革派松戸小金原教会」
法人の規則: 「宗教法人日本基督改革派松戸小金原教会規則」が定められている。
法人の役員: 代表役員 1名 (牧師の職にある者が充てられることになっている)
責任役員 定員5名(長老の中から選出される)
議決機関: 責任役員会、小会(現在は責任役員会も兼ねている)、会員総会
●宗教法人は主に財産保有の上の便宜と免税その他の特典が認められています。また、年に1回所轄庁へ所定の報告をすることが義務づけられています。教会役員は、法人についての概略の知識を持っている必要があります。
必要文書等: 1.宗教法人日本基督改革派松戸小金原教会規則 宗教法人規則へ
2.宗教法人法 (最終改正 平成9年6月6日、法律第72号)
3.宗教法人運営の知識 (千葉県から配布され、教会で保管)