【前註】
以下に晒す駄文は作品の形を呈していません。唐突に思いついてしまったバカネタの卵を、のんびり温めたりせず生のまま転がしてあります。形になるとしたら小説なのか絵もつくのかそれともマンガなのか、どのあたりを対象読者層として狙うのか、舞台は現代なのか未来なのか異世界なのか、そもそもタイトルは――等々、決まってないことは山ほど。それどころか、書いてあることすら確定ではありません。そうしたほうが面白そうなら、すでに明記したことも簡単に覆ります。ので、ついうっかり絵を思い浮かべてしまった方、不覚にも萌えてしまった方(笑)、物語が走り出してしまった方(爆)などいらっしゃいましたら、どぞお気軽にお口出しくださいませ。
それでは、腐らないうちにどうぞ……。- 2001/07/05
武装犯罪者、妖魅、悪鬼、その他もろもろと戦うとある民間警備会社。その急成長を支えるのは、弱冠19歳にして忽然と登場した美しき戦士『まりあ』の存在である。
テレビ等で見る『まりあ』の勇姿と機甲部隊の黒いヨロイのかっこよさに惹かれ、軽い気持ちで入社した主人公・真島瑞貴。研修期間を終えた彼を待っていたのは――女性型の優美なヨロイと、やっぱり女性型の密着型超軽量装甲=強化皮膚=着ぐるみ。
「君の仕事は彼女――『まりあ』のパートナー、『晶』だ」
「……は?」
そんなわけで彼は美少女を身にまとい(爆)、今日も戦うのだ!
●真島瑞貴(まじま・みずき)
主人公。新入社員。22歳。やや小柄。たまに女顔と言われることもあるもののれっきとした男だが、適性試験の結果が群を抜いていたとかで(単に体格がぴったりだったからである可能性は高い)『晶』担当となってしまう。
『晶』はボブカットの黒髪が爽やかな、初々しさ漂う19歳。華麗に活躍するセンパイにほのかな憧れをいだきつつ、その背中を護るのです。
「……って、おい……」
●早乙女理乃(さおとめ・りの)
入社2年目。23歳。『まりあ』担当。一見おとなしい感じのめがねっこだがその実非常に明るくかつノリがよく、別人として有名になっている今の状況をわりと楽しんでいる。入社間もない頃、能力的には申し分ないものの優しすぎる(=威圧感のない)容姿が災いしてなかなか現場で使ってもらえず悩んでいたところを、このプロジェクトを立ち上げたばかりの水巳に見出されたらしい。
『まりあ』は間もなく20歳になるキツめの美女。戦闘では最前線に立ちつつ、CMではイメージガール(?)も務める企業の顔である。
「あ、もちろん仕事中はコンタクトですよー☆」
●竜王水巳(りゅうおう・みなみ)
技術主任。強化皮膚の開発者であり、ヨロイの開発者でもある天才科学者。言うまでもなく美女。『まりあ』と『晶』は機動性を重視した戦闘能力と見るものに与える影響を極限まで追求した結果完成した最高傑作だそうだが、要するにみんな彼女の趣味である。
「――なに、あたしの作品にケチつけようっての?」
●部長
もしくは司令官。ノリの人。少なくとも、部下二人が見ているところでは威厳はない。
研修期間を終え、新入社員・真島瑞貴は本社に戻ってきた。ミーティングに入る前の数分、研修の中で友情を深めた同僚たちと他愛のない会話を交わす。
「『まりあ』のそばで戦いたいよなあ……」
次々と配属先が告げられ、別の部屋へと移っていく同僚たち。ひとり残され戸惑う真島の前には、部長と謎の美女=竜王水巳のふたりがいる。
「君は『選ばれた』」
「君には『まりあ』のすぐそばで活躍してもらうことになる」
「……ってこれ、女性型じゃないですか?」
「そう。今日からの君の仕事は彼女――『まりあ』のパートナー、『晶』だ」
「……は?」
「脱ぎなさい」
平然と言い放つ水巳。
「全部に決まってるでしょ」
「いつまでも恥ずかしがってんじゃない!今日からはあんたの体のメンテナンスもあたしがやるんだから、そういう無駄な気持ちはさっさと捨てる!」
水巳が手にしているそれは、人間の抜け殻みたいで――少し気味が悪い。
体型を補整するものでもあるため、着心地はかなりきつい。時間をかけて身につけていく。
首から下を強化皮膚に包まれた状態になったところで一休み。ごくり、と息を呑む。柔らかな胸、その下、もっと下(爆)……それは目に毒なほどの、圧倒的なリアリティをもって目に飛び込んでくる。
――でも、顔は自分。
「悪夢だ……」
水巳はふん、と鼻を鳴らす。
「すぐ気にならなくなるわ。それどころか自分に欲情できるかもね。あたしの自信作――今んとこ最高傑作なんだから」
顔を被せられる。最初は息苦しかったが、水巳が手を使って密着させていくにつれ、違和感がなくなっていく。全身包まれたのに暑いというわけでもない、というのは、やっぱり凄い発明なのだろう。
完了。
鏡の向こうでは、可憐、という言葉が似合う美少女が頬を赤らめている。
……しかも、全裸で。
「あ……」
そんな、声まで変わって(爆)。しかも、イメージぴったり。
「ちゃんと用を足せるようにしてあるから、そのまま一週間生活することも可能よ。男に肌さらしたってそう簡単にバレやしないわ――ま、さすがにえっちすんのは無理だけど」
「だ、誰がしますかそんなこと!」
「したがる男は多いでしょうねえ」
「……」
『晶』用の制服はまだ用意できてないということで(どうせ嘘だろう)、妙に楽しそうな水巳に女の子らしい私服を着せられる。化粧のレクチャーを受けたあと、部長のところへ。
「うん、うん」
嬉しそうに目を細める部長。セクハラ上司、という言葉が脳裏を駆け抜ける。
……(こわい考えになってしまった)。
「……まさか、『まりあ』――彼女も本当は男だったりするんじゃ……」
「違うよ、彼女はプライベートでも間違いなく女性だ。まああの姿とは多少ギャップはあるがね、あれはあれでまた……」
「……」
「無意味に女性型にしているわけじゃない、その容姿も大切なデザインの一部だ。ヨロイが薄いのはその姿を効果的にさらすためでもあるが、強化皮膚自体が装甲として優秀な性能を持っていて、無粋な重ね着を必要としないからでもある」
「……つまりコレも『装備』だ、ってことですか」
「やっぱり司令官もクールな美女のほうがいいかねえ」
「そりゃどうせならそのほうが燃え……って何言わすんですか!」
オフィスにて『まりあ』と引き合わせられる。彼女は『晶』のキャラ設定上だけではなく、真島自身ずっと憧れていた存在。しばし見惚れる。
「よろしくね」
「『晶』です、よ、よろしくお願いしますっ……!」
声が裏返る。ああ、すっかりキャラに馴染みつつある……。
今日の仕事。
『晶』の設定を覚えること、身につけること。
ううう……。
勤務時間が終わり、自分に――ヘンな言い方だが――着替えて更衣室を後にする。
出てきたばかりの扉に寄りかかる。ぐったり。ため息。
……と、隣の部屋から出てきた人物がこちらに気付いて歩み寄ってきた。
「あの、新入社員の真島、えーと瑞貴さん、ですよね?おつかれさまですー」
縁なしのメガネをかけた、ほんわかした感じの女の子。――誰?
「あ、申し遅れました。わたし、『まりあ』をやってます、早乙女理乃と申します。改めて、よろしくおねがいしますね☆」
「……えええ!?」
どう努力してもイメージが一致しない。
「理乃さんのほうが『晶』向きなんじゃないのか……?」
「あら、じゃあ『まりあ』のほうやってくれます?うん、わたしは『晶』ちゃんもかわいくていいなーって思いますし、かまいませんけど☆」
「う……」
「よーするに、お仕事中だけ、自分の中の『個』と折り合いをつければいーんです。そもそもそんなの尊重されてないんですから、楽しんだほうが得に決まってます☆」
今日の仕事。
名乗りの練習、科白の練習。
恥ずかしい……。
にやにやしながら水巳が言う。
「今日は第二種武装のままあたしについてくること。服はロッカーに入れておいたから、それ着て1850に玄関に集合。――いい?これは作戦行動よ」
緊急出動要請。
「今日は出なくていい。『まりあ』自身とその周囲にカメラを幾つか用意した。それを適宜切り替えて、広告や資料映像ではない本物の『まりあ』の動きを目に焼き付けろ」
「見ての通り、彼女はいま、ここまで戦える」
「――そして君も今、その可能性を手にしているわけだ」
「燃えるだろう?」
今日の仕事。
「……なんですか、これは」
近頃すっかりお馴染みになったイヤな予感が今日も語りかけてくる。運ばれてくるのは何着もの服。しかも、それは――。
「過去が――必要になった」
なぜかこちらに背を向けて、部長が重々しく口を開く。
「広報からの要請だ。君の正式なデビューにあたり、入社までの簡単なプロフィールを用意して欲しい、と、そう言ってきた」
「んなムチャクチャな(思わず地に戻ってしまい、水巳にぎろりと睨まれる)……う……いえ、でも、まりあセンパイはそのへん、謎のままじゃありませんでした?聞いたこと、ないんですけどぉ……」
「それはまあ、その、売り方の違いというものだろう。あー、ということでとりいそぎ、高校時代の写真を何枚か提供してもらいたいんだが――」
それはつまり、これから撮影しよう、という話である。冬服に夏服、体操服――あの、そこに見えるのはひょっとしてすくーるみずぎ、でせうか?(爆)
「……わかりました、けど。でもそんなのすぐウソだってバレません?」
「その点は心配ない。学籍・証書類はもちろん、在学時の担任教師やクラスメイトもすでに確保した。なんなら寮のルームメイトにナイショの過去を語ってもらうことも不可能ではないが」
「……(汗)」
「――で、どーしてここにいるんですか理乃さん、しかもその格好……」
「同級生役に決まってるじゃないですか☆」
撮影開始直前、なぜかお揃いの制服でにこにこしている理乃さん。(てゆーか、『まりあ』の方はいいんだろうか?)
「もちろん顔は差し替えられちゃいますけど、もうひとりいたほうが絵が作りやすいそうなので、せっかくだからーと思って」
「へ?」
「えへへ、じつはわたしこの制服、昔からずっとあこがれてたんですよー☆」
……なんでもかなりレベルの高い名門女子高なんだとか。
「なんでそういうとこ相手にこんなムリきくんだろ……」
つぶやくと、水巳が何でもなさそうに答える。
「うちの持ち物なのよ、あれ」
「……お嬢様、なんですね」(たかびーなわけだ……)
「そこ、聞こえてる」