文部科学省・厚生労働省 進路指導担当者緊急集会 平成14年2月12日 於:フロラシオン青山
事例紹介「未内定者への継続する指導の具体例」
埼玉県立八潮南高等学校
教諭 加藤 雅喜
「不況にうち克つ・・・簡単に就職未定のまま卒業させない取組み、
高校3年生へ、1学期から3学期、卒業証書授与式の後も継続する就職紹介」
という決意で、校長の指導のもと進路指導部・3学年団を中心に全校で取り組む進路指導を
実施してきた。
1 地元の関係機関、団体との連携を継続する。
(1)商工会議所・商工会などとの連携を深める。
@地元企業との説明・交流会に参加して学校PRをし、求人を依頼する。
A生徒が住居する地域の商工会の懇談会へ新しく参入させてもらう。
B地元企業への理解を深める。(地元企業との懇談会や見学会へ教員が参加する) →「3学年・進路だより」で生徒へ情報提供
C求人依頼の手紙の発送に協力を得る・・求人可能な会員の「名簿」提供など協力を受ける。
D商工会会報への求人依頼の記事掲載と、求人依頼文書の回覧に協力してもらう.
(2)業界の会合で、求人依頼の挨拶をさせてもらう。
建設組合連合会の総会、ロータリークラブ総会などで時間をいただき、資料配付して
求人を依頼する。
(3)ハローワークとの連携を深める。
@他県職安の「求人票」の閲覧協力を依頼・・・・・不可となるが・・
A 近隣の千葉県(松戸・柏・流山・野田)職安主催の企業と教員の懇談会に参加させてもらう。
B新しい求人の速やかな伝達を依頼・・・・・FAXコピーして教室掲示
Cハローワークの仕事内容、特に学校の教員の指導の及ばない卒業後の求職活動はどうする
のか、失業保険などについても話してもらう。
D未内定者の生徒に、氏名を除き「志望先・特技・趣味などプロフィール」を書いてもらい、
ハローワークを通じて公共の建物に掲示してもらう。
(4)東京都、埼玉県主催の「企業と生徒の合同就職面接会」に生徒を参加させる。
(5)地元ロータリークラブとの進路懇談会に生徒を参加させる
参加の生徒・・・意欲を引き出す。社会へ出る心構え、激励を受ける。
(6)地元市民へのPRをおこなう。
市役所・支所など公共施設に、学校案内パンフや広報紙を置かせてもらう。
(7)就職・進学研究団体との連携をはかる。
@研究会への参加・・経済採用状況の把握→「3学年・進路だより」で教員・生徒へ情報提供
A東京・神奈川の企業の求人動向を把握する。また、求人資料の提供を受ける。
B専門学校の説明会に出て、就職内定結果と企業一覧をもらい、高校生採用の途を確認する。
Cいわゆる進学校に眠っている求人票をもらいに出かける。・・就職者がいないのに求人がある
2 フリーターの実際について、生徒や保護者に認識してもらう。
(1)学年集会、保護者会などで具体的に説明する。
(2)「3学年・進路だより」で、生徒・保護者に情報、資料を提供する。
(3)就職の自己開拓者や未決定者にも、正しい情報をや将来の就職活動の仕方を指導する。
(4)2学期末にも、成績や欠席で卒業が心配な生徒・保護者と三者面談を新設し、
進路相談を重視した指導する。
(5)卒業生のフリーター経験者を招き、進路講演会で在校生に体験を発表してもらう。
3 生徒の興味・関心を持つ企業の求人を開拓する。
(1)1学期に教員が手分けして実施した企業訪問を、2・3学期にも飛び込み訪問する。
(2)生徒が持ち込む、新聞の「折り込み求人広告」の調査で、求人を依頼する。
(3)生徒が興味を持つ「求職情報雑誌」を調査して、求人を依頼する。
(4)「自己開拓」という生徒に、積極的にアクションを起こし、求人を探す方法を指導する。
(5)インターネットのHPから「eメール」を使って求人を依頼する。←「就職指導員」の企業に
(6)埼玉県「就職指導員」による新しい企業の訪問による求人開拓。←過去に求人をもらった企業
を中心に足を運んでもらう。
4 その他の求人活動も併せておこなう。
(1)同窓会を通じて、卒業生が働く企業、取引先への求人情報の提供を依頼する。
→依頼文書の郵送、今年は同窓会総会の案内に同封させてもらった。
(2)PTA後援会を通じて、保護者が働く企業・パート先への求人情報の提供を依頼する。
(3)地元へのPRを行う。 (前述)
5 生徒・保護者のあきらめ意識を変える指導も継続する。
(1)「就職指導員」によるカウンセリング的な進路指導、人生設計についての面談を行う。
(2)3学期の家庭研修中から卒 業後も進路紹介をするという、保護者への呼びかけ文書を郵送。
(3)就職をあきらめた生徒の意識を、心底から揺すぶる指導も地道ながらも実施する。
6 生徒保護者の意識だけでなく、学校の教員の意識も改める。
一番の障害は、生徒のあきらめにある。また、保護者の根負けにもある。2学期から3学期
にわたって根気強く就職活動を呼びかけなくてはならない。しかし、学校の教員にも一因があ
ると考えられることがある。それは成績・欠席数という「校内推薦基準」の壁である。
方策・・・校長の総合的な判断による改革が、生徒の将来の人生を変える。その行動力に教員の
意識改革がついてくる。
(1)とりあえず2学期末からは、学校推薦の校内基準をゆるめる。
生徒指導、進路指導の観点から、学校紹介による就職希望者への校長推薦基準をゆる
やかにして、生徒の立ち直りの機会を与えて就職活動への意欲を高めることが必要である。
生徒に就職試験への挑戦の機会を与えることで、学習意欲、生き甲斐を持たせる。
(2)就職試験の受験チャンスを与えてくれるよう企業に強力に依頼する。
意欲をかってもらう。就職してからの頑張りを見てもらうよう。徹底的に依頼する。
「社長さん人事部長さんのメガネにかなったら、とりあえず、アルバイトでもパートでも良いから、
そこからスタートし、採用して鍛えてください。」と。
校長自ら、求人開拓に電話依頼、足を運んでもらう。(過去の教え子卒業生を中心に)
私は、これまで成績出席不振の生徒に、「就職しろ。辞めるにしろ続けるにしろ、まず正式入社だ。」「人生 の新人戦、企業人の新人賞レースにノミネートしろ!」といい続けている。学校での求人票・調査書・履歴書 と面接練習をしての一斉就職試験を体験することが大切である。「校内選考」にもエントリーできず、就職試 験の受験体験の無い生徒は不幸である。私たちは、職務上であるなしに関わらず、どんな子でも、この世界や 日本の将来を託すことになるのであるから、大人は子供達に就職先を提供して「俺達は社会から嘱望さ
れてい るのだ。」と思わせる機会を与えることが義務があろうと考えている。
参 考
高校の現状から |