閑 寂

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余呉湖の朝は銀世界だった。夜行で降り立った小さな駅から歩いてすぐの

その湖は静かな靄に包まれていた

10年程前にも一度訪れたことがあるが、見違えるように辺りは整備されていた

確か天女が羽衣を置いていったという伝説が残る地で、賤ヶ岳の古戦場もあり神秘的な雰囲気がある

目の前の霧は走るように流れ、私は寒さも忘れてスケッチを取った

水門のてっぺんに黒い大きな鳥が一羽何時までも留まってこちらを見ていたが

今もその鳥を描くべきだったかと考える

夜が明けて辺りがはっきりと見えだした頃、私はすでに帰途に着いた







絵を描くということは、孤独な格闘技。勝ち負けは自分の中にある

私は何時もそう自問自答しながら、「今度こそは!」と奮い立つのです