昔々、ある島にヒナという大変美しい女王がいた。ある日、ヒナは静かな森の川辺で沐浴をしていた。ところがその川には恐ろしい巨大なウナギの魔物が棲んでいて、ヒナを一目見るなり恋をしてしまい、自分の妻にしようとさらって行ってしまった。その話を聞いた島の勇者は、早速、ヒナの救出へと向かった。ウナギとの戦いは熾烈を極めたが、とうとう勇者はウナギの首を切り落とした。草の上に落ちたウナギの首は、ヒナを見つめると弱々しい声で「今はお前は私のことを嫌っているが、やがて私を愛し、毎日口づけするようにだろう。」と告げると息絶えた。
無事ヒナを助け出した勇者は、戦利品としてウナギの首を草で編んだ籠に入れると、ヒナと共に村へ帰ることにしたが、途中、疲れたのでウナギの首を側の草むらに置き、ひと休みすることした。二人はついウトウトとまどろんでしまい、ふと目覚めると、ウナギの首から見たこともない巨大な木が生えていた。その木は、ウナギの胴のように幹には一本の枝もなく、大きな青々した葉を空高く広げ、二人の上に涼しい木陰を作っていた。そして、やはり見たこともない大きな丸い実をたくさん付けていた。早速、その一つを取って割ってみると、中には甘くて冷たい水がたっぷり入っていた。この実はたちまちヒナのお気に入りとなり、彼女は毎日、美味しい水を飲むたびに、ウナギの化身のその実に口づけした。
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