タヒチ・ポリネシアの伝説

ボラボラのヒロの伝説太陽を捕まえたマウイ
ココナッツになったうなぎ


ポリネシアの伝説は分布する地域が広いので、特にどこの話とは特定し難く、 バリエーションも様々なのですが、たくさん集めていこうと思います。

§ボラボラのヒロの伝説§

タヒチには、様々な神がいるが、ヒロはその中の一人だ。参考にした本には 「盗人の神」と紹介されていて「とんぼ」をお守りとしている。これは盗みを働くときの目隠しの効き目があるそうだ。

彼ヒロは、ある時ボラボラの南の端にあるトゥープア島にやってきた。もちろん盗みを働くために。  ヒロは、先ず手始めにトゥープア島を盗んでやろうと、彼の愛鳥の雄鶏と一緒に島を掴んで大きなカタマリに千切り、引きずって持ち去ろうとした。しかし、この時雄鶏と一緒だったのはまずかったらしい。彼の盗みに対する不思議な力や大きなものを動かす能力は、急速に衰える。ナンと、日没から日の出までの間しか、盗むための能力は使えなくなってしまった。 ヒロは、大いに怒り狂って、大切にしていたはずの雄鶏を殴りつけて、すさまじい勢いで、パヒア山に打ちつけた。この跡は、今日でも見ることができるという。夜の間しか力を使えなくなったヒロは落ちぶれて、ついには、大切なカヌーさえ海に沈めてしまった。
それ以来、ヒロが盗もうとして千切った島は、トゥープアイティと呼ばれるようになった。そして、トゥープア島とトゥープアイティの間に沈んでいる平行な大岩は、「ヒロの(双胴)カヌー」と呼ばれている。

また、トゥープア島の奥には、叩くと鐘のような音のする岩がある。これは、「ヒロのベル」と呼ばれている。 かつて、ヒロと彼の息子マラマは、「ティモラッア」でよく遊んだそうだ。「ティモラッア」とは、ポリネシアに伝わるゲームで、積み上げた石から1つを放り投げ、ココナッツの籠にその石を集めるのだ。早く、なくさずに石を集めた方が勝ちとなる。2人とも力溢れる巨人である。大きな石を次から次へと放り投げていた。しかし若さ故か、マラマの方が早く最後の石に手をかけていた。怒ったヒロは、そのマラマの持っている石を蹴り飛ばした。石はなくなってしまった。
怒ったマラマは、それ以来ヒロと「ティモラッア」をしなくなった。しかし、この当時2人が放り投げた石は、そこら中に散らばっていて、今日でもそのあたりは、「ヒロのティモラッア場」と呼ばれている。

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§太陽を捕まえたマウイ§

昔々、空はずっと地面に近く人々は身を屈めて生活しなくてはならなかった。間近で今よりももっと暑い太陽がギラギラ照りつけるので、強烈な暑さで作物は育たず、おまけに太陽は、あっという間に沈んでしまうので、すぐ暗くなってしまい、昼間の仕事が全く出来なかった。その様子を見たマウイは 、なんとか太陽の速度をもっと遅く出来ないものかと考えた。

まず、彼は太陽を捕まえようと、岩陰に身を隠し日が昇ると共に素早く縄を掛けた。しかし、普通の縄では、太陽の力は強く、縄を引きちぎって逃げてしまった。困った彼は月の女神ヒナに相談してみた。ヒナはそれでは自分の髪の毛を使ってみなさいと髪の毛で編んだ綱をくれた。

今度は大成功!!マウイは太陽を地面に引きずり降ろして、固い木で作った棍棒でメッタ打ちに打ちのめし、弱ったところを見計らって空に戻すと、更に空を高く持ち上げた。そのとたん、空と地の間に涼しい風が吹き込み、作物も育つ過ごしやすい世界になった。弱った太陽も高い天空をノロノロ動くうえ、日差しも弱くなったので人々は、のんびりと明るい内に仕事が出来るようになった。

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§ココナッツになったウナギ§

昔々、ある島にヒナという大変美しい女王がいた。ある日、ヒナは静かな森の川辺で沐浴をしていた。ところがその川には恐ろしい巨大なウナギの魔物が棲んでいて、ヒナを一目見るなり恋をしてしまい、自分の妻にしようとさらって行ってしまった。その話を聞いた島の勇者は、早速、ヒナの救出へと向かった。ウナギとの戦いは熾烈を極めたが、とうとう勇者はウナギの首を切り落とした。草の上に落ちたウナギの首は、ヒナを見つめると弱々しい声で「今はお前は私のことを嫌っているが、やがて私を愛し、毎日口づけするようにだろう。」と告げると息絶えた。

無事ヒナを助け出した勇者は、戦利品としてウナギの首を草で編んだ籠に入れると、ヒナと共に村へ帰ることにしたが、途中、疲れたのでウナギの首を側の草むらに置き、ひと休みすることした。二人はついウトウトとまどろんでしまい、ふと目覚めると、ウナギの首から見たこともない巨大な木が生えていた。その木は、ウナギの胴のように幹には一本の枝もなく、大きな青々した葉を空高く広げ、二人の上に涼しい木陰を作っていた。そして、やはり見たこともない大きな丸い実をたくさん付けていた。早速、その一つを取って割ってみると、中には甘くて冷たい水がたっぷり入っていた。この実はたちまちヒナのお気に入りとなり、彼女は毎日、美味しい水を飲むたびに、ウナギの化身のその実に口づけした。