第八話:回文の「依頼原稿」ってあるの?


回文学会の事務局から電話があった。

「2000年の1月1日の河北新報(仙台の新聞)で『終わりの始まり』というテーマで、この大世紀末と来るべき新しい世紀の始まりをテーマに、見開き2ページの回文の特集を組むことになりました。回文の、終わりがまた始まりになっているというところに目を付けた訳です。」

えっ!それはすごい企画ですなあ」

「つきましては丸山さんに、世紀の終わりと始まりを表現するメインの回文を作っていただきたいのですが。」

えっ!。ちょっと待って下さい。回文というものはですねえ、話せば長くなりますが、その内容は『偶然』に支配されているのですぞ。例えばですね。ここに葉月理緒菜さんが居るとしますね。まあ居なくてもいいんですけど。その葉月さんの回文を作ると自動的に彼女は「胃潰瘍」になってしまうんです。いいですか「胃潰瘍も治り傷はいい葉月理緒菜もう良いかい」(いかいようもなおりきずはいいはずきりおなもうよいかい)。解りますか?例えば「宇津井健氏は神経痛」(うついけんしはしんけいつう)なんです。回文の世界では。それをですね、宇津井健氏を胃潰瘍にしたり葉月理緒菜さんを神経痛には出来ないんです。これをですね、私は「回文世界における必然性」と名付け、「回文占い」を始めようかと思っているくらいで・・・」

「わわわわわかりました・・・・しかしですね。聞くところによると、『宇津井健見た瓶は市販ビタミンK2』(うついけんみたびんはしはんびたみんけいつう)という説もあって、宇津井さんは出血を止めようとしているそうじゃあないですか。本当に神経痛なんですか?

「・・・・」

「あの大リーグの野茂選手だって『野茂・大物』(のもおおもの)になったかと思えば『野茂行けよ!余計物!』(のもいけよよけいもの)になったりしてるじゃあありませんか。」

「むむむむむ・・・・そこまで調べがついているとは。わかりました。やってみましょう。それにしてもあんたはんよう調べはったなあ」

「はい。回文コンテストの際に盗作がないか丸山さんのホームページを調べさして貰いました。これは丸山はんが盗作したっちゅう意味やのおて、丸山はんの作品からの盗作がないか調べたんどすぇ。」

「それは有難いことでおますなぁ。そいで、どないどした?」

「ぎょうさんありましてんねん」

「ひえ〜〜〜」                      (一部脚色あり)


そのような訳で、私はいつしか回文の依頼原稿を受けてしまったのでありました。

作ってみたら、一日で三つほど出来て、まあまあの出来映え。

皆さん!2000年1月1日の河北新報をお楽しみに!!

ところで、「回文」の作品を自費出版したり集めたりしている人はいますが、「書き下ろし」の回文が依頼され、それが天下の新聞に出るというのは世界初かも・・・「新聞小説」ならぬ「新聞回文」の登場か。そのうち新聞社に「回文部」なんてぇのが出来て「回文のプロ作家」が登場するか?

「新聞回文部行かん文士」(しんぶんかいぶんぶいかんぶんし)なんてね。