ロマンは一日にしてならず
第40回(2003.1.3)


現代のロミオとジュリエットその1



 私が東北のある小さな地方都市に出向し、病院に勤務していたときの話です。リコーダーの演奏が趣味の私は、地元のアマチュア音楽家たちと交流を持ちました。週一回、木曜会と称して、その人たちを自宅に招き合奏を楽しんだり、食事をともにしました。

 交流を深めるうちにメンバーの一人Mさんが、大変な悩みを抱えてることを知りました。Mさんの交際相手の女性の父親が、何と、Mさんの父と仇同士だというのです。従って二人の結婚についてはどちらの家族も大反対。もし一緒に暮らそうものなら、勘当するどころか、一家心中も辞さない勢いだと言うのです。底抜けに明るいMさんでしたが,合奏練習の後で時折寂しい表情を見せました。


 そうこうしているうちに私が新潟に戻る日が近づいてきました。そこで私は病院の講堂を借りて「さようならコンサート」をやることにし、そのメンバーも一緒に出演してもらうことにしました。曲目も決まり、一同練習に励むうち、Mさんは、決然と語りました。


「僕はさようならコンサートが終わったら、駆け落ちをする。日程や行き先については、迷惑をかけるといけないので、メンバーにも内緒にするよ」


 コンサートは私だけではなくMさんのさようならコンサートも兼ねる事になったのです。
 さて演奏会当日。私はリコーダーを、ほかのメンバーはオーボエやチェンバロ、ギターなどを演奏、Mさんは師範の資格を持つ尺八や得意のフルートを披露し、コンサートは順調に進むはずでした。

 ところが演奏を始めたMさんの様子が突然おかしくなったのです。

 なんと聴衆の中に、スパイがいると言うのです。あのスパイが家族を連れて来るまでに脱出しないと駆け落ちは失敗します。果たしてコンサートはうまくいくのか、Mさんの運命やいかに。

 この続きは来週をお楽しみに。



 
本日の回文

「とーさん来い。わいわいコンサート」