第26回(2002.9.27)
良薬は口に苦くない

 近年の薬学や、製剤の技術の進歩には目覚しいものがあります。昔は「良薬は口に苦し」と言いましたが、最近苦い薬はかなり少なくなりました。それは、薬をカプセルに入れたり、苦い薬成分を甘みのある成分でコーティングした顆粒にしているからです。これは薬ではありませんが、例えば口紅では、口紅の赤い色素にかぶれる人のために、ミクロのレベルで色素をコーティングし、皮膚に直接触れないようにしているものが売り出されています。
 また、飲み薬では長時間にわたり作用するようにコーティングの厚みを変えて時間差で効くようにしているものもあります。
 薬には飲み薬の他、注射や座薬などもありますが、座薬は腸から直接吸収されるため、即効性があり、強い効力が期待でき、しかも胃腸障害が少ないなどのいいことずくめの薬です。
 点滴や血管注射は血管に直接入れるため、これも即効性が期待できます。飲み薬を間違って点滴すると死んでしまうのは、飲み薬は粒子が粗いため血管が目詰まりするためです。
 このように色々な薬がその役割に応じて色々な経路で投与され、それに合うように設計されています。最近ではドラッグデリバリーシステムといって、宅配便でそれぞれの家庭に荷物を届けるように、必要とする臓器に正確に届ける
ような剤型も設計されています。このため、より副作用が少なく、より的確な治療が可能になるわけです。
 病気の種類もいろいろで、治りが悪いと「先生、全然治りません」と言われますが、劇的に治っても感謝されるとは限らず「先生、あの薬こんなに効いて大丈夫ですか?」と聞かれる場合もあります。そんな時私は「まあ、そう嫌が
らずに、薬だと思って飲んでください」と煙に巻いてしまいます。


本日の回文

「リスクの無い良い名の薬」
(りすくのないいいなのくすり)