ロマンは一日にしてならず
第23回 (2002.9.6)

猫の恩返し・続編



 学生時代に知人の中年夫婦に野良猫の子をお歳暮としてあげ、私はその家の娘を嫁にもらいました。ひょっとするとこれは猫の恩返しだったのかもしれません。


 その後猫とのかかわりもなくなり、息子が三人次々と産まれ十年余の歳月が流れました。
 富山に住んでいた私達は、そこでまた忘れられない猫と出会いました。

「かわいい子猫が何匹かいるから、あげるわよ」

との近所の方の言葉に一も二もなく

「欲しい!」

と答えた三男翔太郎が白と茶のぶちの雌猫を選び、早速家族の一員となりました。

「ポテチ」

と名付けたその子に顔を何箇所もひっかかれながら寝る時も一緒という入れ込みようです。ポテチは容貌・性格のよい、気品のある猫に成長しました。やがて彼女の妊娠に気づいた私達は出産を心待ちにしていました。

 遂にその日が来ました。

「ママ、大変、なんか出てきたよ!」

との翔太郎の声に、これから先は見ないでそっとしておこうね、とドアを閉めて数時間後、のぞいて見ると母親の顔になったポテチが五匹の子猫にお乳をやっていました。

「チーコ」

と名付けた一匹だけを残し、護国神社のフリーマーケットで全員の里親を見つけました。
 ところが、その一年半後、ポテチとチーコとの生活がぷっつり断ち切られてしまったのです。

 原因は妻洋子の思いがけない喘息。

 激しい発作に即入院となった妻へ医師の冷酷な言葉。

「猫が原因です。手放さない限り退院はできません。」

妻は一晩病院で泣き明かしたそうです。子供達にはママの命と引き換えだから、と説明し納得させ、近所の獣医さんに里親探しを依頼し、引き取っていただきました。


 これがもう飼うことのできない猫と我がファミリーの歴史です。今でも猫達との暖かい交流は家族の心の中にしっかり生きています。


「本日の回文」

「子猫の子、親に似ずにニャオ、この子猫」