ロマンは一日にしてならず(2002.8.16)
第20回 分業制テレビと天然冷蔵庫
学生時代の私は、よく言えば節約家、悪く言えばけちでした。
学生時代をすごした弘前の冬は寒かったため、この時期は部屋の窓の外に棚を作り、そこに食べ物などを置いて冷蔵庫代わりにしていました。
冬はたいていコタツにもぐっていた私でしたが、粗大ごみの日は
「宝探し」
と称して、いそいそとゴミ捨て場に向かったものです。
ある宝探しの日、私はテレビを発見しました。それも2台あります。ホクホク顔の私はそそくさとそれらを自転車に積みアパートに戻りました。
一台目のテレビに早速電源を入れ、試してみると音は出ますがどうしても画像が映りません。
「う〜ん、残念」
とつぶやきながら、今度は二台目です。今度は画像は映るものの音が出ません。
「こりゃあどっちも駄目だ」
と独り言を言いながら、二台を積み重ねました。
両方にスイッチを入れれば、それぞれ音と画像が出るので、問題のないことに気づいた私は、それから2台のテレビ両方にスイッチを入れて使うことにしました。
そんなある日のこと、一人の友人が私のアパートを訪れました。部屋に入った友人は
「丸山、お前テレビ2台持っているんか?」
と怪訝そうな顔で尋ねました。私はいつものように両方にスイッチを入れ、
「うん、こっちは音専用、こっちは画像専用だよ」
と説明したところ、友人は目を丸くして叫びました
「お前のテレビは分業制か!」
二人で大笑いしながら私は何気なく部屋の窓をガラッと開け、ジュースを手に持ち振り返りました。するとその友人は、さっきの3倍も驚いて叫びました
「お前の冷蔵庫は天然か。分業制テレビに、天然冷蔵庫。お前は大発明家だな!」
その噂は、あっという間にクラス中に広まり、次々とクラスメイトが見にやってきました。
よほど特殊な機能のテレビと巨大な冷蔵庫があると思ったようです。
それでは、「竹やぶ焼けた」でおなじみ、逆さ言葉の本日の回文です。
「テレビしびれて」