ロマンは一日にしてならず (2002.7.26)
第17回 フランス人のラーメンの食べ方
今回はパリに滞在した時のお話です。パリも3日目、いい加減フランス料理に飽きた私は、ラーメン屋に入りました。
そこは、日本人が経営し、雰囲気も日本的です。
フランス人の客も多く、茶髪の若い日本人の店員がフランス語を巧みに操っています。
ふと横を見るとフランス人が焼きそばをフォークで食べています。
ラーメンを注文してから私は連れに言いました。
「山本君。ここはフランスだからラーメンを食べる時には決して音を立てないように気をつけなさい」
しかし山本君は
「先生、ここは日本の店だから大丈夫ですよ」
と取り合いません。しばらくすると隣のフランス人のところにラーメンが来ました。
私は再度言いました
「山本君、フランス人が音を立てずに食べる様子をみて参考にしなさい」
二人はそのフランス人をじっと観察しました。
彼はまず蓮華を持ち、一心にスープを飲みはじめました。
そしてスープがなくなるとようやく箸を手にし、ラーメンの上の具を食べ始めました。
具をすっかり食べ終わってからやっと麺に取り掛かります。
汁気のなくなった麺は温度も下がり、食べやすそうです。
それを見た山本君は我慢しきれずに言いました
「先生。あの食べ方では、とってもまずそうですね」
私は諭すようにいいました
「山本君、あれは音を立てないための手段だよ」
フランス人はすっかり麺も食べ終わり、その後、最後に残しておいたチャーシューを食べました。
それを見た私と山本君は
「あっ」
と叫んで顔を見合わせました
「これはフルコースの食べ方だ!」
つまり、まずスープを飲み、次に野菜の前菜、そして麺を食べてから最後にメインの肉を食べたのです。
これには完全に脱帽しました。
私たちが何気なく食べるラーメンも、食べ方によってはフルコースに変身するのです。
これこそ文化の違いではないでしょうか。
それでは、「竹やぶ焼けた」でおなじみ、逆さ言葉の本日の回文です
「んめーラーメン」