人間は皮膚呼吸をしているか (2002.6.21)

 

 子供の頃、全身にコールタールを塗ると皮膚呼吸ができなくなって死んでしまうと聞いて、恐怖におののきました。

 またあるとき、全身に金粉を塗ると死ぬと聞いて

「よし!全身に金粉を塗るのはやめよう」

と、金粉も持っていないのに固く心に誓ったものです。


 そんなある日のこと、私は自宅の風呂に入っているとき、ふと考えました。

「さっきからだいぶ長く入っているがなぜ窒息しないんだろう?」

そこで私は試しに首までどっぷりつかり数を数えました。100位まで数えたとき、苦しくなって風呂から出ました。

「やっぱり皮膚呼吸しているんだ」

そうつぶやいた私は汗びっしょりでした。

 さてその数日後私はプールで泳いでいました。私はやっぱり首までどっぷりつかり数を数えましたが、いつまでたっても苦しくなりません。その時ふと人間は皮膚呼吸はしていないのではないかと思い、この疑問は皮膚科医になるまで続きました。

 皮膚科医になってわかったことは、人間は両生類のような生命維持に必要な皮膚呼吸はしておらず、密封してもこの点は何も問題がないということでした。

 道理で、風呂に入っても死なないはずで、私が苦しくなったのは熱がたまりすぎたせいでした。コールタールを塗った場合も同じでしょう。金粉を塗っても何も起きないと思いますが、成金趣味に対する警告かもしれません。

 化粧しすぎると皮膚呼吸ができなくなるというのもデマで、毛穴からの皮脂の流出が悪くなり、にきびや吹き出物が出やすくなります。

 まったく世の中にはいろいろなデマがあるものです。



夜好き。いい息するよ。

(よるすきいいいきするよ)