ビートたけしの、両鼠蹊部に両手の小指側をあて、左右同時に素早く引き上げながら「コマネチ!!」と叫ぶギャグをご存知の方も多いだろう。
いまだにときどき見かけるし、ついにコマネチ本人にも知れるところになったという。http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20150406/enn1504061118004-n1.htm
1976年のモントリオールオリンピックの体操競技で、当時あり得ないと言われた最高点10点満点を連発したルーマニアのナディア・コマネチ。
15歳の小柄な体から繰り出す切れのある動きは、それ以前のチャスラフスカなど、成熟した女性の体操競技の概念を一変させた。
「この身軽な体で軽やかに動かれては、今までの女性はかなわないな」と感じた人は多いだろう。
一方、当時「コマネチ」という言葉は日本人の耳にはなじめず、実況のNHKアナウンサーもたびたび「コマチネ・・失礼しました、コマネチ」と言い直していた。
1964年に人工衛星で外国の映像がテレビで見られるようになってわずか12年。外国人の名前は日本人にとってはほとんど瞬時に頭に入らない時代である。
「コマチ」という音は「小町」からの連想ですぐ頭に入るが、「コマネ」とか「ネチ」という音は日本語では例外的な音の組み合わせである。
現在は欧米系の名前は日本人の頭にも定着しやすくなったが、例えば大相撲のモンゴル人力士の本名を正確に言える人はどのくらいいるだろうか?
カタカナで画面に表示されても、一字一字たどって読んでいるうちに字幕は消え、結局、認識もできず頭にも残らない。そもそも四股名があるので記憶する必要もない。
多分当時「あの体操のコマチネ、じゃなかったコマネチってさ・・・」のような会話が横行している中で、言語感覚に優れたビートたけしが、「コマネチ!!!!」とやったことで、一瞬にして聞きなれない音がインプットされ、もやもや感がすっきりしたと思われる。
しかも、あの素早い動作によって
「あのもたもたしたおばさんの体操じゃなくて、細身の、そのおかげで体操服も今までよりハイレグに見える、あの動きの素早い体操選手のコマネチっ!(さっさと名前覚えろ!)」
という複合的なメッセージが集約されて、人々の心をつかんだのではないだろうか。
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おまけ
ジョークとか言ってから、「え~~今のシャレがなぜ面白いかといいますと、このような理由でありまして・・・・」というとシラケますが、敢えてやってしまいました。スミマセン。