ホーキング博士の名言


車椅子の天才科学者、ホーキング博士をご存知の方は多いだろう。専門は天体物理学など。

40年前に、彼は講演で、

「この広い宇宙にはおよそ200万個の知的生命体が存在する惑星が存在するだろう」と述べた。

それに対して聴衆の一人から

そんなにたくさん存在するのに、なぜ彼らは一人も地球に来ないのか?」と質問が出た。

ある程度天文学や物理学、数学的知識のある人なら、この質問に答えることは極めて容易であろう。

「おまけ」の欄に私なりの回答を示すが、ここでは『物理的に確実に不可能』とだけ申し上げておく。

学者がこの質問をすることはありえないが、一般人対象の講演会なら十分ありうる質問。特にジャーナリストと称する人種はこのような質問を好む。

これに対するホーキング博士の回答は画期的なもので、私は度肝を抜かれた。

彼の答は、

「文明が高度に成熟すると、惑星はそれを支えきれなくなり、惑星間旅行ができるようになる前の段階で破たんするから。宇宙時間でいえば、瞬間的に消滅する」

といった内容であった。

この回答自体は、天体物理学的なものではない。つまり、「少し論点を変えてかわした」科学的ではない回答だ。


しかし、この回答には二つの含蓄がある。一つは小さな皮肉、もう一つは大きな警鐘。

1)純粋に天文学や物理学を私から学びたいのなら、いくら一般人やジャーナリストでも少しは勉強してきてください。手取り足取り教えるような回答はいたしませんよ。

2)「惑星間旅行」はできません。そんなことより、今、我々の築いた高度文明社会が我々人類はもとより、生態系、地球に与えている甚大な問題について考えてください。しかし、私は環境専門家ではないのでいちいち細かいことは言いません。どのようにしたら我々が破たんしないで済むかを真剣に皆で考える時期が来ていることだけ申し述べます。

1)のような皮肉には、質問者は気が付かないだろう。

私には、この回答は、2)の含蓄を含んだ比喩的な警鐘に聞こえるのだが、「事実」を突き付けられたように感じる人も多いようだ。

「え!?そうなのか。どうりで来ないはずだ。他の惑星に行くほどに高度に文明を発達させようとすると、それが実現する前に自滅してしまうんだな」

石原慎太郎前東京都知事(現衆議院議員)は本年2月に衆議院の代表質問でこの話を引用し、「最も信頼しうる学者が研究の結果発見した真実」のごとくに述べている。

ホーキング博士のような、政治的立場にない一流の人物の、このような発言は大変に価値がある。

しかし、真に政治家をも動かしうるのか、こればかりはわからない。

後で「思い知る」ことにならないように願うのは私だけか。


おまけ

昔聞いた言葉。今でも忘れない。正確な文言はわからないが以下のようなもの。

並みの医者は  病気を治す

少し上の医者は 人を治す

真の医者は    国を治す

(「凡医は病を癒し、上医は人を癒し、名医は国を癒す」だったかな?)

これを肝に銘じて仕事をしてきたつもりだが、最後の言葉の意味はよくわからなかった。

でも、これをホーキング博士に置き換えれば、「真の学者は国を治す」と言えるかもしれない。


おまけ2

「宇宙時間でいえば瞬間的に消滅」というのは、石原氏の話によれば「100年」と答えたそうだが、例えば人類の歴史2万年も、宇宙時間の100億年に比べれば、50万分の一で「一瞬」であることに変わりはない。

宇宙時間を「一日」とすればわずか0.17秒で、今後どうあっても「一瞬」であろう。
真の学者に比べれば石原の脳みそなど赤ん坊程度、などとは決して言いませんが。


おまけ3

ホーキング博士はまた別の講演会で、「(このまま地球温暖化が進めば)500年後には地球は金星のような火の玉になっているだろう」と述べている。おそらく彼は正しい。しかし、500年とはあまりに近いではないか。

織田信長が生まれて500年弱。その反対側にはもう人類の絶滅が来るというのだ。ホーキング博士は達観しているようだが、私はかくのごとくジタバタしている。他の大多数の人は、多分、何も考えていない。


おまけ4 なぜ宇宙人が来ないか真面目な回答

私が中学生頃にした大雑把な計算だが、最も近い恒星(ケンタウルス座のα星)が太陽から4.3光年の距離にある。

太陽をピンポン玉(直径4㎝)とすると、地球はそこから4.3メートル離れている。

さて、問題です。ケンタウルス座αは太陽からどのくらいの距離でしょうか?

長くなったので、この回答も含め

次回に続く