第一話
猫の魂
ある朽ちかけた古いお屋敷の庭。昔はさぞ栄えたであろうが、今や雨戸には隙間があき、屋根の瓦はずれ、栄枯盛衰を感じさせる。
時刻は真夜中の二時を回った頃。生ぬるい風が、ざわざわと生い茂った木々を揺らしている。
その風の音の中から猫の鳴き声が・・・・苦しいのか、喉の奥から搾り出すような何とも言えないかぼそい声。にゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜お
そういえば、三代前の当主は大変な猫好きだったらしい。しかし、あるときから人が変わったように猫を邪険にし、屋敷から猫は一匹二匹と姿を消したとか・・・・・そのときの恨みでもあるのか、猫の声は続く。
にゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜おそのか細い声も次第に大きくなってきた。にゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜おにゃ〜〜おにゃ〜〜〜お・・・・・
今までは風にかき消されそうだった声ははっきりとした意志を示すかのように響き始めた。
にゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ご にゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ごにゃ〜〜ご
ひょっとするとただ事ではないかも知れぬ。”化け猫”という言葉が頭をよぎる。猫が飼い主に恨みを持つと、どうなるのか、身の毛がよだつ・・・・三代前の当主への恨みがその子孫まで伝わって・・・・・まさか!?と思ったその時。
突然屋敷の雨戸がけたたましい音を立てて開くと一人の女が飛び出すと叫んだ!
「猫のタマ! シ〜〜!」
「猫のタマ! シ〜〜!また あんた盛りがついたわね!全くうるさいんだから。近所に迷惑でしょ。」
一匹の猫を抱きかかえると屋敷に入っていったとさ。めでたしめでたし。
「猫の魂(猫のタマ、シー)」の一席でした。てけてん!