ローマのダスティン・ホフマンはスペインマフィアか良い人か?(その3)


そろそろ、楽しい宴も終わりに近づいてきた。

「じゃあ、お勘定!ボクの分と、そちらの二人分別々ね」とレオン。

先ほどの年配のバーテンがうやうやしくグラスのシャンペンを持ってきた。

「え!?頼んでないよ」と気色ばむレオン。

「お客様。これは会計までの間にお飲みいただく当店のサービスでございます」

レオン「おお。それはありがとう。じゃあ。最後の乾杯だ。チンチン!」 (註)チンチン(cincin):イタリア語で「乾杯」

私「ははは。これで、カッツォにボーヤにチンチンが揃いましたな!」

一同「わははははは!」

盛り上がっているところに、勘定書きが来た。どれどれ・・・・・

(いち・じゅう・ひゃく・せん・まん・・・・・)

心の中でゼロの数を数える。

ええええ!!??何だこの数字は!

にひゃくまんリラ???えええ??にににににひゃくまん・・て、えーとえーと・・・・

10万円だ!!!顔が引きつる。いやいや、落ち着くんだ。明細書を請求するか??

でも、ケチをつけて殺されたらどうする?そういえばさっき、やくざみたいな男がいたような・・・・

10万円で命が助かるならそれでもよいか・・・・

結局、顔は引きつったままクレジットカードで支払った。

(くくくくそ〜〜〜、おのれレオンめ、はめやがったな・・・・道を尋ねる振りをして仲間のぼったくりバーに連れ込んだのだ・・・)

と煮えくり返るはらわたを押さえながらレオンの顔を見ると、あっけらかんと、

「は〜〜い。バイバイ元気でね。ボクはこのお姉ちゃんお持ち帰りするよ。ちょっとお金かかるけどね〜〜」

さらに続けて

「じゃあ、ここで見送るから、気をつけて帰ってね〜〜〜バイバ〜〜〜イ!!」

あくまで明るい。

私は泣いたような、笑ったような顔で手を振った。くくくくそ〜〜。10万円は痛いなあ。

でも一生のうちでこんなことは何回もないから、授業料というか、思い出賃だと思う事にするか。いやいや、ミラーボールを見た瞬間に走って逃げればよかったんだ・・・・・など、色々頭を駆け巡る。

私「おい、健坊、今のどう思う?はめられたかな?それとも、銀座のバーでシャンペン飲めば10万円位軽くかかるから俺たち「ローマの銀座」で豪遊したのかな?」

健坊「さあ、どうだろうね。微妙だね・・・・・・」

懐の痛んでいない息子は、半分他人事のように答えた。

すっかり酔いも醒め、微妙なローマの夜は更けて行くのであった・・・・。


おまけ 

皆様、レオンはどういう人だと思いますか??
ご意見をお寄せください。

ポイントを列挙します。

1)二人で10万円はさすがに高いと思うけど、女性が3人付いて、豪華な店で、シャンペン飲みまくったので、そういう店もあるかも。ただ、立地はちょっとはずれの坂の上で、そんな店がありそうなところではないと思いました。

2)本当に店に雇われた客引きなら、店に入れたところで消えてもいいわけだけど、最後まで結構楽しんで「お持ち帰り」までしていた。

3)スペイン人と言っていたけど、店のイタリア娘とは一貫して英語でしゃべっていました。スペイン人とイタリア人が英語で会話するのは普通なのか?私たちがいるので気を使って英語でしゃべっていたのか?

4)行く道々息子とレオンは車の話を結構していたけど、息子の話では車の知識はしっかりしていたようだと。ただし、「車の一般的な話」のレベルでしょうけど。

5)わりとインテリっぽい感じで、英語も上手く、崩れた感じはなく「Dermatology」を知っていた。しかし、信じてしまう「ツボ」を突かれたのかも。

6)最後に「サービス」のシャンペンが出たときの気色ばみようは演技には見えなかった。演技が上手いのかもしれないが、99%成功していて、そこまで演技するかな?

7)「ビールを飲もう」と言って、「シャンペン」はかなり怪しい。

8)最初に話しかけてきた時に尋ねた場所には全く行く気配がなかった。これも怪しい。

9)店に他の客はほとんどいなかった。

10)私としては以下の可能性を考えています。

  @店(ぼったくり?)に雇われた客引き

  A雇われている、というほどではないが、ある程度の「契約」でバックマージンや割引あり

  B金持ちで、高額な店に入るのは苦ではないが、仲間が欲しかった。我々は話していて気に入られた。 

  Cその他

皆さんどう思われますか?似たような経験をした人、まさか「レオン」本人を知っている人がいたら、すぐご一報を!!