済生会新潟第二病院
皮膚科 丸山友裕
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前回は、アトピー性皮膚炎の各年齢層における発疹の出方やその理由、保湿剤の重要性について解説しました。今回はステロイド外用剤、食事療法、日常のケアなどについてお話しましょう。
ステロイド外用剤と聞いただけで、「危ない」と感じる方もいらっしゃいますが、その功罪をよく知り、適切に使用できることが重要です。
ステロイド外用剤について重要なポイントは二つあります。第一に強さのランクがあり、桁違いに強いものが存在する事(表)、第二に皮膚の部位によって吸収の度合いが最大300倍も異なる事(図)です。
この二つの要因が適切にマッチしなければ、治療が不適切になる事は明白ですね。
外用剤の強さの選択は部位特性と年齢の他、個々の皮疹の重症度によります。強い外用剤はジクジクした所やごわごわと厚くなった部位に限定的に使うべきで、広範囲に塗るのはあまり強くないものにします。
成人型アトピー性皮膚炎では首から顔面に赤みが出るのが特徴です。この理由はまだ完全に解明されていませんが、ステロイド剤はあまり使わず、免疫抑制外用剤を使用するようにします。
食事制限に関しては血中の特異的IgE値を参考に制限する場合もありますが、IgEが高いことイコール湿疹の原因とは言えず、医師によって判断が分かれます。消化管が未熟なうちに卵白や牛乳などを与えるとアレルギーが誘発されやすいので、離乳期から1〜2歳までの予防的な制限はした方がよいと考えます。食事アレルギーは年齢と共に軽減しますので、2歳以降の無理な制限はデメリットの方が多いでしょう。ただし、特定の食物を摂取した後に、明らかに口の周り等が赤くなる、咳き込む、息が苦しくなる等の症状がある場合は制限の対象になります。
日常生活では、皮膚への刺激を避ける必要があります。衣類、装飾品、髪型は皮膚への刺激がないように注意し、汗や皮脂よごれなどはこまめに洗い、洗った後はすぐ保湿剤を使用します。
適切なケアと治療によって快適な日常生活ができることが治療の目標になります。平成12年には日本皮膚科学会で治療のガイドラインが定められました。これは、研究の結果これが一番安全性と有効性のバランスの取れた治療であり、全国どこでも受けられるという意味でもあります。
つまり、標準的な治療の継続を心がけ、安易に特殊な治療を求めるべきではありません。色々な特殊治療に挑戦してもすべて無効で、結局は標準治療に落ち着くという方がほとんどです。
現代の医学では、一気にアトピー体質を改善することは不可能です。従って民間療法薬も保湿効果や低刺激をうたった物は有用な可能性はありますが、「体質が変わる」などと称する物は疑ってかかるべきでしょう。