茶・青・黒いあざ

(メラニン色素系のあざ)


 先週の赤あざの話に続いて、今回はメラニン系のあざについてお話します。 茶あざ、青あざ、黒あざはいずれもメラニン色素過剰によるものです。色調は過剰なメラニン色素の深さと量によって決まります。

 茶あざは正常と同じレベルの深さ(表皮内)でメラニン色素が増殖していますので、そこだけ日焼けしたような茶色をしています。扁平母斑といいます。あざではありませんが、顔面に生じる老人性色素斑や肝斑などのしみもメラニン色素が同様の状態で増殖しています。青あざは表皮の下の層である真皮でメラニン色素が増殖しています。色素がやや深いため青く見えます。顔面に生じる太田母斑や赤ちゃんの蒙古斑などがこれに該当します。表皮でも真皮でもメラニン色素が大量にあると真っ黒に見えます。色素性母斑(ほくろ)がこれに該当します。色素性母斑では、母斑細胞という奇形的な色素細胞が表皮や真皮に存在し、メラニン色素を過剰に作ります。

 ほくろは誰にでも生じ、少ない人でも20個、多い人では300個あるといわれています。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんには、例外的にやや大型の先天性色素性母斑が存在することはありますが、普通このようなほくろは一個もありません。母斑細胞だけが生まれつき存在し、紫外線などの刺激を受けるうちに徐々にメラニン色素を作り、姿を現わしてくると考えられます。このようなものは2歳から20歳位まで増え続けます。

 何故このようなあざやしみができるのでしょうか。

 皮膚のしわ、たるみなどの老化現象や多くの皮膚癌は紫外線が誘因になっています。メラニン色素はその黒い色のゆえ光を吸収し、深部までその有害な紫外線が到達することを防いでいるのです。従って、もし皮膚にメラニン色素が欠損していれば、老化や癌化がどんどん進む大変危険な状態、ということになります。もちろん必要な分だけ程よく均一にメラニン色素があればよい訳ですが、神様にも間違いはあります。そこで神様は、より安全な方向へ向かうように、少し多めにメラニン色素を作ったのではないでしょうか。  蒙古斑は赤ちゃんのおしりに見られる東洋人に特徴的なものです。実際は他の部位にも出ますが、数年で自然消失します。

 蒙古斑以外のあざは自然に消えることはありません。また、悪性化するものはほとんどありませんが、黒色調が強く、20歳を過ぎて出てきたものや、でこぼこしているものは注意を要する場合もあります。

 青や茶色のあざは通常生まれつきあることが多いのですが、生後しばらくして姿を現わすこともあります。

 太田母斑は特徴的な症状と経過をとります。生後数か月での発症と思春期頃の発症と二つのタイプがあります。顔面の、片目の上下、または取り巻くように徐々に青色が出てきます。茶色っぽいこともあります。口腔内や眼球の白い所にも青色が出ることがあります。

 これらのあざは美容的に気になれば治療の対象となります。前回お話した赤あざと同様、メラニン系のあざにもレーザー治療が可能になりました。あざの種類により成功率はかなり異なります。例えば、太田母斑は1〜数か月おきのレーザー治療5~20回でほぼ100%治癒します。しかし、扁平母斑は成功率が低く20~30%で、逆効果の場合もあります。あざではありませんが雀卵斑(そばかす)や老人性色素斑にもレーザー治療は有効です。これらと紛らわしい肝斑は内服治療の適応です。

 色素性母斑は、色の濃さ、形、大きさ、部位によって、レーザー、切除、電気メスで削りとる、などの方法から適切な治療を選択します。これらの方法を組み合わせたり、数回に分けて少しずつ切除する場合もあります。

 これらの治療は皮膚科や形成外科で行っています。

済生会新潟第二病院

皮膚科  丸山友裕