赤あざ・・血管系のあざ

レーザー治療が有効


 古来あざにはいろいろな俗説があります。妊娠中に火事を見ると赤あざの子が生まれ、転ぶと青あざの子が生まれる等はその最たるものです。あざは母親の責任ではありません。原則として遺伝もしません。あざは胎生期の体細胞レベルの局所的な突然変異により生ずる偶発的なものと考えられます。

 漫画家の楳図かずお氏は、17歳になると顔にあざが出て来る家系の姉妹の、あざ出現前後の心理的葛藤を描いています。このような家系的なものは現実には存在しませんが、あざを持つ人の苦悩を見事に看破しています。

 皮膚の色の異常を主とするあざは血管系のものとメラニン色素系のものに大別されます。前者は赤あざと呼ばれ、文字どおり赤く見えます。これは皮膚の毛細血管が異常に増え、血液の色が透けて見えるためで、単純性血管腫、苺状血管腫などがあります。後者は色素の深さやその量により茶、青、黒色に見えます。

 今回は赤あざについてお話ししましょう。

 単純性血管腫(ポートワイン母斑)は平らな赤あざで、生まれつきあることが多く、自然に消えることはありません。ただし、赤ちゃんの前額、眉間、上眼瞼、鼻の下に生じる淡いものは、サーモンパッチと呼ばれ、生後1〜2年で消失します。後頭部のものはウンナ母斑と呼ばれ、ほぼ同様の経過をとるとされています。これらは「コウノトリの爪あと」とも言われ、縁起のいいものと考えられています。

 単純性血管腫は大きさも様々で、身体のどこにでも生じます。片腕や片脚全体にわたる大型のものでは、患部の四肢が肥大することがあります。この肥大の進行が予想される場合は早めの血管腫の治療の開始が望まれます。

 単純性血管腫が顔面の片側に眼を取り囲むように出た場合は、眼球の中にも血管腫が存在し、緑内障を起こす可能性がありますので眼科医の診察を受ける必要もあります。

  近年、レーザー医学が進歩し、単純性血管腫の治療が安全に行えるようになりました。1〜2か月間隔の5回から20回位の治療により、約70%の率で軽快します。瘢痕等の副作用の心配はまずありません。単純性血管腫は一生変化しないとされていますが、年齢とともにわずかずつ黒ずみ、でこぼこしてくることがあります。そのためか、レーザー治療の有効率は、成人より小児の方が少し高いようです。

 苺状血管腫は生後1週間位で赤ちゃんに出現する赤あざです。文字どおり苺を半分に切って皮膚の上に置いたような外観です。生後6〜10か月まで成長するがその後は自然消退するので治療は不要、といわれてきました。  しかし、隆起しすぎて消退しきらないものが意外に多いことと、レーザーにより瘢痕形成の危険なく治療ができるようになったことから、レーザー治療を早期に施行したほうが良いという風に考え方が変わりつつあります。

 眼の周りの苺状血管腫が盛り上がり、視野を塞ぐ危険がある場合、早急に治療する必要があります。乳児期に視野が塞がると、生涯にわたり良好な視力が得られなく恐れがあるからです。

 次回はメラニン色素系のあざについてお話しします。

済生会新潟第二病院

 皮膚科部長丸山友裕