質問

 脱毛症で悩んでいます。子供の頃から発症し、約10年皮膚科に通い、完治しました。三年前に上の子を出産した頃からまた抜けはじめ二年前に再診しましたが、二人目を妊娠していることがわかり中断しました。

 そして先日下の子の授乳も終わったので本格的に治療しようと受診したところ、医師の言葉は「二年間何もしないで髪が生えなければ何をしても生えません。普通は自然に生えるもの。それでも治療を続けますか」という事でした。納得行きません。

 一度治っているのに本当に治らないのでしょうか。何年かかっても治すつもりで行ったのに疑問ばかり残ります。有効な治療法は本当にないのでしょうか。

(新潟市・主婦・C子28歳)

回答

 この医師の言葉を文字通り解釈すれば、「脱毛症は自然に治るので、治療の意味も必要もない」ということになりますね。ご立腹のよし、痛いほどわかります。

 C子さんは円形脱毛症のようです。少しご説明いたしましょう。

 本症は、ストレスが原因といわれていますが、それだけでは説明がつきません。専門的には毛組織に対する自己免疫疾患と考えられています。つまり、生体が誤った免疫反応を起こし毛組織を攻撃、そのために毛が抜けてしまうのです。この現象は反復しやすいため再発率は高く、60%以上です。一方で自然治癒力もあるため、軽症例では放置しても治ってしまう場合があります。従って、円形脱毛症は、治療不要のものから重症化や再発を防ぐために十分な治療を必要とするケースまで、かなり差があるといえます。

 このことからその医師の真意を推測すると「あなたは、自然治癒する程の軽症ではなかった。従ってもっと早く入念な治療を始めるべきであった。今治療を開始してもそれより効果が劣るが、それでもよいか」といったところでしょう。 

 しかし、これは裏を返せば、治療をするかしないかでは大差が付くということに他なりません。

   円形脱毛症には内服、外用、ドライアイス圧抵、局所免疫療法(かぶれ反応を利用し、誤った免疫反応を抑える治療法)、紫外線照射、ステロイドの局所注射や内服等、色々な治療法があります。治療効果は個人差が大きいため、重症度や罹病期間、治療に対する反応等を見て、工夫して行います。  C子さんは過去に十年かかって治癒していますので、今から治療を開始しても効く可能性は十分あると思います。少なくとも、二年たっているから全く駄目ということはありません。

 がっかりせずに治療を受けてみてはいかがでしょうか。   

     済生会新潟第二病院 皮膚科 

丸山友裕