質問
25歳の娘のことで相談します。生まれた時から左横腹に10センチ位の丸い茶褐色のしみがありました。見えないところだから気にしておりませんでした。ところが、2年前から顔以外の体にごく小さいイボの様なものがたくさんできてきました。
病院で「レックリングハウゼン母斑症」と診断され、生まれつきだから治療法がないといわれました。今ごろどうして・・・とショックでした。イボは大きくなれば除去手術をといわれ、合併症として眼、耳の検査を半年に一度しています。今のところ異常有りませんが年頃ですので結婚、妊娠と心配です。本当に治療法がないのでしょうか。母親として毎日心配でたまりません。
見附市・E子・55歳主婦
回答
レックリングハウゼン母斑症は大小複数のしみと、神経線維腫といわれる腫瘤を特徴とするものです。医学書を見ますと、色々な合併症の記載がありますので、突然の病名宣告にさぞや驚かれたことと思います。
この疾患は生まれつきの素因に基づき徐々に症状が出ますが、重症度にかなり個人差があります。通常、神経線維腫は思春期頃から出現し、増数・増大します。娘さんの場合、出現が遅く小型のものばかりですので、かなり軽症と考えられます。
従来、神経線維腫の進行を防ぐ方法はないされてきましたが、ある種の抗アレルギー剤の長期連用により腫瘤の増殖抑制が期待できるという研究が最近報告されました。試みる価値がありそうです。
レックリングハウゼン母斑症は八つのタイプに分けられます。その多くが常染色体優勢遺伝ですので、二分の一の確率で赤ちゃんに遺伝する可能性があります。また、妊娠中は神経線維腫が増大する可能性が有ります。その意味では妊娠中も抗アレルギー剤を内服した方が良いということになりますが、薬剤の有用性と危険性を天秤にかけて考慮する必要があります。従って、妊娠・出産に関しては事前に専門医に相談をしたほうがよいでしょう。
レックリングハウゼン母斑症は長い期間をかけて徐々に変化するものです。従って定期的な検診を受けるなど、やるべきことはしっかりやる必要がありますが、くよくよするのは良くありません。
幸い現在のところ眼、耳等の合併症も有りませんので、ゆっくりと見守って差しあげてください。親が心配しすぎるのは精神的にマイナスになりかねません。
済生会新潟第二病院皮膚科
丸山友裕