質問

 七歳の娘の右足趾の第二趾の一趾側に赤ちゃんの頃からほくろがあり、気になっています。墨がにじんだようなほくろで、3ミリ大と大きめで、場所的には下に近い方です。何かの本に、そのようににじんだ足の裏の方にあるほくろには注意、というようなことが書いてあり気がかりです。悪いものや、あるいは悪くなる可能性があるのでしょうか。お聞かせください。

(北蒲原郡・C美・29歳)


回答

 日本人の悪性黒色腫の最好発部位は足の裏ですので、足の裏の黒い斑を見たときに不安になる方が多いと思います。しかし、意外に思われるかもしれませんが、ほくろ(色素性母斑)と悪性黒色腫は全く別症と言ってよく、前者から後者が発生することはきわめて稀なことなのです。

 そこで、足の裏の悪性黒色腫やその前駆症と、色素性母斑の見分け方についてお話ししましょう。

 ほくろは普通生まれた時はなく、幼少時より徐々に出現し成人期頃まで増加します。正式には後天性色素性母斑といいます。これは直径5ミリくらいまでのことが多く8ミリを超えることは稀です。形は円形か楕円形でほぼ左右対称です。ところが足の裏では一見不規則な形に見えることがあります。皮溝、つまり掌紋の溝に沿って濃いことが多く、これがすじのように見えるのです。これなら心配ありません。ご相談の方も虫眼鏡で拡大してみて下さい。

 これに対して悪性黒色腫は通常成人になってから発症し、不規則な形、濃淡のむらやにじみ出したような色などが特徴です。最大の特徴はその大きさで、直径が7ミリ以上あるということです。7ミリ未満の悪性黒色腫の報告は殆どなく、この大きさであれば心配ありません。仮に悪性の兆候があったとしても、大きめに切除することにより完治が期待できます。  逆に、大きい色素斑はすべて心配なのかというと、そうでもありません。生まれつきのほくろ(先天性色素性母斑)はそもそも指頭大位のことが多く、この場合大きさそのものはあまり問題ではありません。先天性色素性母斑から癌の発生の報告はありますが、かなり稀です。ただし、色や形が極端に不規則なものは一応注意した方が良いでしょう。

 C美さんの娘さんの場合は、幼年期発生の後天性色素性母斑と考えられ、にじんだように見えるのが皮溝に沿った濃淡であれば問題ありません。ただし、小型の先天性色素性母斑の可能性もありますので、色が極端に不規則であれば皮膚科を受診した方が良いですが、成長とともに7ミリに近くなったら受診するという判断でもよいと思います。  一般に、成人過ぎに出現し、大きさが7ミリを超えたものについては要注意です。

済生会新潟第二病院 皮膚科 丸山友裕