質問

 22歳の息子のことなのですが、小学生の頃から手のひらや脇の下などに大量の汗をかく子で、そのために大好きなファッションもできず、最近、本人も悩んでいます。なんとか治してあげたいと思っているのですが、できれば手術をせずに制汗する方法があれば教えてください。

(中蒲原郡・C子・50歳)

回答

 多汗症で悩んでいる方は多く、パソコンのキーボードが壊れて弁償させられたOLや、試験の答案用紙が破れてしまった高校生や、いつも服で汗を拭うので落ち着きがないと叱られた小学生などの話は枚挙にいとまがありません。

 汗は気化熱による体温調節が主な役割ですが、精神的緊張によっても起こり、手、足、脇の下と限られた部位にみられます。多汗症とは、この精神性発汗の著しい状態をさします。このため精神安定剤等を処方されることが多いのですが、残念ながら効果は期待できません。塩化アルミニウム液の外用が脇の下に効く場合もありますが、有効率はあまり高くありません。

 現実的な方法としてイオントフォレーシスがあります。これは患部を水道水を入れたトレイに浸け、微弱な電流を通すものです。連日行うと約2週間位で効果が現われます。体質までは変わらず、効果を維持するためには定期的な継続が必要です。近年、陽極側に生じた水素イオンが汗腺分泌部の細胞膜のイオンの出入りをブロックし汗腺機能を停止させることが判明し、有効性が実証されました。しかし、この治療を行っている施設が少ないのが現状です。

 根治的な治療としては内視鏡による胸部交感神経切除術があり、劇的に奏功します。欧米では握手する習慣により本症の悩みは深刻で、この手術は盛んに行われており、日本でも最近保険適用が認められました。しかし、腹部などに代償性発汗を生じるたり、まぶたが下がる、暑いところにいると倒れてしまうなどの副作用を生じることもあります。

 私の病院では、皮膚科でまずイオントフォレーシスを施行し、効果のあがらない方に十分相談の上、手術療法を行っております。

 なお、インターネットに多汗症に関するホームページ「手のひらの機嫌」があります。パソコンをお持ちの方は参考にして下さい。アドレスはhttp://ha2.seikyou.ne.jp/home/tsurena/hyper/

済生会新潟第二病院 皮膚科 丸山友裕