よく政治家などが、
「え〜〜。わたくしは以前より総理大臣を務めさせていただいておりますが、このたびの選挙の惨敗の責任を取らせていただくため、頭をまるめさせていただき・・・・」
みたいなフレーズをやたらに使いますね。
「指導していただき、ありがとうございます」 これなら何の問題もありません。
しかし、許可したり、頼んでいないことでも「させていただく」ので、だんだん鼻につかせていただきたくなります。
一体この言葉遣いは何なのでしょう?
今回はこの謎に挑ませていただきます。なんちゃって。
「美化語」というものがあります。
花→お花
婦人→ご婦人
など、「お」や「ご」をつけて丁寧に表現します。
これは、そのまま尊敬語や謙譲語としても使われることがあります。
たとえば、
@「先生のご連絡がまだありません」(美化語)
A「先生、ご連絡なさいますか」(尊敬語)
B「後ほどご連絡いたします」(謙譲語)
「ご連絡」が3通りの敬語表現に使われるのですね。これは全く違和感がありません。「ご案内」もほぼ同じ。
ところが「ご確認」はどうでしょう。
あるとき
「この点につき、会社に戻ってからご確認し、後でご連絡いたします」
といわれたとき、
「自分の『確認』に尊敬語を使うとは何たる不届きもの!」と私は内心「ムッ」としました。顔には出なかったと思うけど・・・
上記「ご連絡」Bの謙譲の用法と同じようにも見えます。本人はそのつもりで言ったのでしょう。
しかし、「ご案内」「ご連絡」のように謙譲語として使えるのは「相手のある行動」のみですね。相手のない「確認」という単語は「ご」を付けて謙譲語としては使えないのです。
それでは、「相手のある行動」ならすべて「お」や「ご」を付けて謙譲語として使えるでしょうか?
例えば「講演」。これはどうですか?
「先生、ご講演お願いします」・・・尊敬語として適切。
「私はご講演した」・・・・・これは謙譲語としてはかなり違和感ありますね。でも「私は聴衆の皆様にご講演した」なら許せるかも。日本語は難しい。
さらに言うならば、「お」か「ご」をつけて敬語化するのは一部の単語にしかできません。例えば「ご会話する」とは言わないよね〜〜。
したがって、すべての尊敬語、謙譲語を「お(ご)○○する」で切り抜けられればよいのですが、そうは行きません。
「お」や「ご」はオールマイティではないが尊敬語の方にはわりと使える。
しかし謙譲語としてつかえる「お」や「ご」はごくごく一部。
そこでひねり出したのが謙譲語としての「させていただく」ではないだろうか。
「指導していただき、ありがとうございます」これは自然。
自分がしてもらうことが「していただく」なのだから、自分がすることは「させていただく」で良いじゃないか!という発想ですね。
これは便利ですよ。ほとんどすべてに使えます。
つまり、従来謙譲語で表現できなかったほとんどすべての行動を、簡単に謙譲語で表現できる「オールマイティー謙譲語」なのです。
さっき苦労した「確認」も「確認させていただけ」ばよい。あ〜〜簡単簡単!!
それで、政治家など、言葉を選ばなければいけない人たちは無難な方法として多用するのでしょう。
しかし、「食べさせていただきました」はないでしょう。これ「いただきました」でいいんですよ!
今回は、これで終わらせていただきます。はい。