食事中の人は聞かないで下さい
私の元同僚でちょっとお人好しのY先生の物語です。
勤務先の病院は忘年会、新年会、歓迎会に送別会と飲む機会が沢山ありました。
大酒飲みの看護婦Bさんはその日も飲みまくっていました。一次会が終わり、二次会、三次会と進み、さすがのBさんも限界を超していました。四次会に至り、突然倒れると正体不明になってしまいました。
さすがにこれは大変だ、救急車を呼ぼうということになりました。皆でBさんを店の前に担ぎ出し救急車を待っていると、仕事帰りのY先生がたまたま通りかかったものだからたまりません。
「Y先生、Bさんを助けて下さい」
と、酔っ払いを押し付けると皆は、また飲みに戻ってしまいました。
しかし、そこはさすが根っからお人好しのY先生、Bさんを抱えるとじっと救急車の到着を待ちました。そうこうするうち正体不明のBさん、Y先生の腕の中でついにげろげろと戻し始めました。あ、お食事中の人はお許しください。Y先生
「ギャ〜助けてくれ〜」と叫んだものの、Bさんを放り出す訳にもいかず、ひたすら耐えて抱えていました。ようやく到着した救急車にBさんを押し込むと
「◯◯病院、皮膚科まで行ってください!」と叫びました。
「こんな人をそんな遠くの病院のしかも皮膚科に運んでどうするんですか?」とあきれる救急隊員。何故か、Y先生を見る目がとても冷たく突き刺さりました。しかしY先生はひるまず再び叫びました。
「構いません。何故なら私はそこの医師、この人は看護婦です!」
病院に到着すると、Bさんを皮膚科病棟に運びました。Y先生はBさんを寝かせ、夜勤の看護婦に大きな声で指示をしました
「点滴セット、酔っ払いバージョン!!」
余談ですがこの点滴は酔っ払いに効果てきめんで医局旅行などに際しては下っ端の医局員がいつも持たされるものです。
さて、Y先生、点滴をさそうとするのですがちっとも入りません。いくら不器用なY先生にしても、おかしな感じです。目の焦点が合わないようです。改めて周りを見ると遠近感が全然わからないのです。おかしい・・酔ってもいないのに、Bさんの毒気が目に来たのだろうかと冷や汗をぬぐいながら眼鏡をはずしてみると、なんとそのレンズには、Bさんの体内から飛び出したワカメがべったりと張り付いていたのでした。 呆然とするY先生、再び叫びました。
「救急隊の人達〜。何で教えてくれなかったんだ〜〜」
本日の回文
「今朝起きてつい一滴お酒」
(けさおきてついいつてきおさけ)