謎に悩む人生


 小学校4年か5年の時のことです。

 日本初の高速道路、名神高速道路が開通しました。その時の新聞には大きな見出しで、次のように出ていました。

「陸の大動脈開通」

それを見た私は考えこみました。この道路は一方通行なのだろうか、と。

その少し前に学校で人間には動脈と静脈があり、心臓から体に行くのが動脈、体から心臓に戻るのが静脈と習ったからです。名古屋と神戸はどちらが心臓なのだろう。そして、一方からもう一方に車が行ったら戻れないんじゃないか?車は片方にたまってしまうんだろうなあ。どうして一緒に静脈を作らないんだろう、等と考えたら夜も眠れなくなりました

 それからしばらくして、私はまた新たな謎に出会いました。なんと

「光は地球を七回り半廻る」

というのです。これには度肝を抜かれました。

光はまっすぐ進むと習ったのに、どうして地球を廻るんだろう。解った。引力で引っぱられるんだ!でもどうして七廻り半で止まるんだ。止まったら落っこちるのか?謎は深まる一方です。他の人は疑問を感じないんだろうか。何も言わないところを見ると、きっとみんな知っているんだ。悔しいなあ。また眠れなくなりました

 子供の頃の私は常にこのような大きな謎に悩まされていました。名神高速道路が実は一方通行ではなく、動脈というのは漠然としたたとえであることや、光は秒速30万キロで、それは地球の外周の7.5倍に相当するという「たとえ」であることが解るには相当の年月を要しました。

 大人が常識と思っていること、それは本当に常識なのでしょうか。常識が常識になるためにはおそらく膨大な知識の積み重ねが必要です。

 エジソンは子供の頃、大人に知能が遅れていると思われていたそうです。しかし彼は知恵遅れどころか、天才といわれるまでの大発明家になりました。何故彼は知恵遅れと思われたのでしょう。おそらく彼は彼なりの謎に悩んでいたのではないでしょうか。母親は彼に理科の実験の本を与え、自分で謎を解く面白さを教えたそうです。

 皆さん、お子さんのちょっとした疑問、笑わずに一緒に考えてやってください。物事はクイズのように正解は一つとは限りませんし、正解がない場合もあります。一緒に考えるうちに皆さんも夢見る子供時代に帰れるかもしれません。 私のように夢ばっかり見ていても困りますけど。

本日の回文

夜、何をか悩む。やな顔になるよ。

(よるなにおかなやむやなかおになるよ)