朝の随想・後半戦突入


 

 10月に始まった私の随想も26回予定のうち13回が無事終了し、今日は14回目。年も改まり区切りのいいところで後半戦に突入です。

 今まで、色々な方から感想やアドバイスを頂きました。特に毎回最後に発表する回文に関するご意見が沢山ありましたのでご紹介いたします。

 随想を始めてまだまもない頃のことです。ある公開講座で講演した後、聴衆の一人が演壇の方においでになりましたので、講演に関する質問かと思いましたところ、

「あの、朝の随想を聞いているんですけど、回文が早すぎるのでもう少しゆっくり言って頂けませんでしょうか」

と言うではありませんか。講演の内容とかけ離れた意外な発言に目を白黒させておりましたところ、その方は申し訳なさそうに立ち去って行きました。

 また、ある日のことです。病棟に行ったところ、ある看護婦さんが

「あ、先生丁度いいところへいらっしゃいました。一つ教えて下さい」

といいますので、患者さんの病状のことかと思いましたが

「うちのおばが、10月8日と10月15日の回文を書き取れなかったので教えてください」

とのこと。このあたりから私は少し反省し、回文をゆっくり読むように心がけることにしました。また、長すぎるものは削って短かくし、音だけでわかるもの、インパクトのあるものを選んでおります。なるべくその日の話の内容に合わせるため、今までの約800の作品の他、書き下ろしの新作もいれるなど、人知れず苦労しております。

 一番嬉しいのは、私の中学のときの友人が、私の回文を聞くために涙ぐましい努力をしていることです。この友人は放送時間が出勤途中のため回文を書き取ることが出来ず、ラジオを聞きながら自分でボイスレコーダーに向かって声を出し録音するそうです。あるときは自転車で横断歩道を渡りながら、手にしたボイスレコーダーに向かって怒鳴っている姿を擦れ違う人々に奇異な目でみられたとのことです。彼は最近バス通勤にしたため、さらに人目に耐えながら録音しています。

 ある日、その前日に運動会で痛めた足を引きずりながら、耳にはイヤホンをして、片手に鞄、片手にはボイスレコーダー、吊革につかまることも出来ず、バスの揺れのままにあっちへフラフラこっちへフラフラ、足の痛みと周りの目に耐えつつ

「いかん、下痢、限界」

と、その日の回文を叫んだのに、電池切れで録音されてなかったとのこと。ここまでしてくれるとは誠に有難いことです。

 バスに乗ってこれを聞いている皆さん。もし周りにこのような中年のおじさんがいたらどうか大目にみてやってください。

それでは「たけやぶやけた」でおなじみ、逆さ言葉の本日の回文です。

西暦二千年、新しい千年のスタートを記念して一句

生かせ起点

新千年元年

先進的世界

(いかせきてんしんせんねんがんねんせんしんてきせかい)