牛小屋の王子とサンタクロース
今日はクリスマスイブ。キリストは馬小屋で生まれたそうですが、かく言う私は牛小屋で生まれました。子供のころから母親に「キリストが馬小屋の王子ならおまえは牛小屋の王子だ。キリスト様に負けていないよ。」と言われていました。
私の実家は海にほど近いところにあり、四軒長屋でした。これは元々牛小屋だったものに仕切を付け改造し、四世帯が入れるようにしたものでした。そこに住んでいた両親の元に、当時は普通だった自宅分娩で生まれたのが私。それで牛小屋の王子、という訳です。子供の頃私は自分が牛小屋で生まれたことが大の自慢でした。
そんなわけで私はクリスマスやサンタクロースにはことのほか思い入れがあります。そこで今日はサンタクロースの話をします。
私の子供たちがまだ小さかった頃、わが家には毎年サンタクロースが来ました。あるときは二階のベランダから、あるときは風呂場の窓から、いつのまにかプレゼントを置いていったものです。クリスマスイブの夜になると3人の子供たちはクリスマスのご馳走もそこそこに、ワクワク、そわそわし、お互いに目を合わせ、「来たかな?まだかな?もう少ししたら探しに行こう」などと相談します。そしてついに一人が「行ってみよう!」と叫ぶと、家中我先にと探し周り、誰かがプレゼントを発見しようものなら、阿鼻叫喚の騒ぎです。
その様子を見ながら私・実はサンタクロースは
「ふっふっふ、今年もまだ気が付いていないぞ」
と思っていました。しかし長男が中学生になってもこの騒ぎは続きました。さすがの私も
「この年になっても気が付かないのはおかしい」と薄々思うようになりました。
しかし、気が付いてるのかどうか聞く訳にもいかず、さらに数年が過ぎました。長男が高校生になった年、ついに意を決して尋ねました。
「おまえたち、サンタクロースが誰だか知っているか?」すると、
「お父さんでしょ。前から知っていたよ。僕たちが気付いてるってことがわかるとかわいそうだから黙っていたんだよ」と言うではありませんか。
私はずーっと騙されていたのでした。
自分がサンタクロースになっていたつもりだったのですが、本当のサンタクロースは、実は子供たちだったのです。あの輝く目、笑顔、こんな素晴しいプレゼントは他にありません。
今年も日本中の家に笑顔のサンタクロースが現われますように。
メリークリスマス!
本日の回文
「年の瀬にワイワイノリノリの祝いは偽の使徒」
(としのせにわいわいのりのりのいわいわにせのしと)
「サンタ、つい創作さ。嘘言ったんさ」
(さんたついそうさくさうそいつたんさ)