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update : 2002.2.24.sun

多次元オリジナルストーリー <3>

 

『大人の階段のぼる君は』

がんま・れい様:作
2002.02.16.sat





 




              

マゾーンとの戦いの最中。
ハーロックは艦の破損箇所の確認と修理を行うため、そしてクルー達の休息もかねて「海賊島」に針路を取った。

台羽正はその時、配属場所の変更が決定した。

「君は有紀蛍の副官として、頑張ってもらう。」
艦長室に入るなり、正はハーロック直々にそう告げられた。
正は不満だった。
女性の下に就くなんて、そんな事・・・。
という考えがありありと正の表情に出ていたのか、ハーロックは椅子から立ち上がると、正の肩に手を置いた。
「大丈夫。蛍は有能な女性だ。」

何言ってやがる・・。
正は叫びたかった。でも最年少の弱みで何も言えない。
思えば父親を殺されて、アルカディア号に乗る決意を固めたときに自分を迎えに来てくれたのが、有紀蛍だった。
しかも敵襲に遭い、その時の雷撃のせいで正は気を失った。
目覚めたときは艦の中で、「無傷」の有紀が殆ど悪びれた様子もなく
「ごめんねー、ヘマしちゃって」
ときた。この恨み、忘れてなるものか。

とにかく正は不満だった。
艦長・ハーロックに訴えたところで状況が変わりそうにも無いので、副長のヤッタランにだけでも苦しい胸中を、漏らしておこうと思ったのだが・・・。
「いざとなったら女の方が怖いんやでえー」
と、反対の事を言われてしまった。反論したくても、最年少の弱みで何も言えない。

・・・・孤立無援と言っていい。
そんな正の後ろで名前を呼ぶ声がする。
振り返ってみたら、新上官・有紀蛍であった。
「台羽君、暇な時は艦内の清掃をお願いねv」
と箒とモップを手渡された。
「・・・・・・・・・。」

かくして正の「掃除職人」生活が始まった。
しかし、流石に「戦闘時以外は怠惰な」アルカディア号である。
どんなに掃除しても掃除しても掃除しても、塵やごみが溜まっていくのは何故だろう??
モップで綺麗に磨き上げたところを、酒をこぼしたり汚れた靴でそのまま歩いて行くのには正は閉口した。
だが、最年少の弱みで何も言えない。

そんなある日、物資補給にためにどこかのスペースコロニーに立ち寄った時のことだ。
コロニーを発ってから大人達の様子がおかしい。
廊下のスペースを所狭しと円陣を作って座り、何かを黙々と観ているようだ。勿論正は気になった。
近づくと、クルーの一人からはじかれてしまった。しかも
「お前にはまだ早い」
とまで言われてしまった。
子供扱いされて、正はいよいよ不満だった。

でも一体何を観ているのか。
気になってしょうがない。
正は妙な「法則」を発見した。ミーメ、上官・蛍、そして食堂のマスさんは「円陣」の中に加わっていない。と言う事は女性には興味の対象外ということになる。ではハーロックはどうかというと、
そんなクルーを一瞥するだけだ。一瞥の後
「戦闘中には読むなよ。」
といって立ち去っていく。集団に参加する事は無くても「容認」はしている。それにしても、ハーロックは興味深い事を言った。
「読むなよ」
その言葉で正はそれが本である事を知った。

とにかくその「本」を読んでみたい。
一体どんな内容なのか。大人を感動させるような素晴らしい本なのか?
どうしたらその本を読むことが出来るのか・・・・・?
「!!!」
閃いた。
利用するのは今の立場ではないか。
正は「掃除職人」の立場を与えてくれた有紀蛍に、この時初めて感謝した。
それ以来、正は掃除をしているように見せかけながら大人達の様子を探っていた。その甲斐あって大人達の本の隠し場所を、突き止めた。
後は戦闘が始まったときのドサクサに本を取り出して読むだけである。
正は「その日」を待っていた。

程なくして「機会」はやってきた。
マゾーンの軍隊が奇襲を仕掛けてきた事がある。いつもは親の仇と好感度の良くないマゾーンであったが、この時ばかりはマゾーン様様である。
当初の計画通りに正はその「本」を取り出し、どきどきしながら見開いてみた。開いてから正は丸で天国から地獄に落とされるような気持ちに陥ってしまった。さてそれはどんな本であったか。
いわゆる、成人向けの・・つまり「アダルト本」であった。

・・・・・・・大人なんて・・・・。

それは無いだろう正。子供扱いされて不貞腐れていたのはお前じゃないか・・。
とはいえ、この時の正には「御愁傷様」としか言えないだろう・・。

その日の艦長室でハーロックとヤッタランが会話していた。
「なに?台羽がムクレている?そうか。やはり女性の配下に就けられてしまったらなあ。」

その夜。
医務室でミーメと共に自棄酒に興じる正の姿があった・・。



終劇

 

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 ★アルカディア号内の知られざる隠れエピソード?!
  有紀螢の下に付けられて、不服だった台羽正君ですが、更にもっと追い討ちをかける事件が…。
   そういえば、新入りは最初は掃除からやらされるものでしたよね。
 掃除しても掃除しても汚されるというのはあのアルカディア号の乗組員からして思わず納得してしまいました。
 それを考えても、掃除係って一番過酷な持ち場かもしれない…。(それを任命した螢もなかなか厳しい上官ですね〜。)
 それにしても、台羽君には受難でしたが、彼の純粋さを感じさせられたお話でした。
  なんとがんま・れいさんの第3作目です。ありがとうございました〜!
 
  


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