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update : 2001.10.27.sat

多次元オリジナルストーリー <2>

 

『LAND OF THE FREE』

がんま・れい様:作
2001.10.22.mon

 

 





 〜All we have is our faith, the will to win this fight. We will not obey anything ・・・


 ・・・・ええ、その話はこの地方ではとても有名な話ですよ。
なんたって海賊の船長があたしたちに違った未来を与えてくれた話なんて古今東西稀でしょうからね。
今じゃ、吟遊詩人たちも競うようにリュートを片手にその武勇譚を歌っているくらいなんですから。

 おや、お客さんこの話に興味がおありなんですかい?
分かりました。それじゃもっと詳しくお話しましょうね。

 その海賊とは今も北海やバルト海を往来しているハーロック一族の先々代の方でして、名前をベルンシュタイン・ハーロックだと伺っております。
海賊とは言え襲うのは豪商や貴族の運搬船でして、一般の船は決して襲うことはありませんでした。
そういえば、ヴァイキングとも何度か戦っていたようですね。
太陽の許に輝く亜麻色の髪、そしてその名の通り琥珀色をした瞳を持つ雄雄しい船長だったと伺っていますが、ベルンシュタイン氏のその瞳は一族の中でも取り分け美しい琥珀の瞳をお持ちだったそうでございます。
ハーロック一族とは、もともとハイリゲンシュタットから出た由緒ある騎士のお家柄だそうですが、その頃にはこの街のはずれの入り組んだ海岸の内側に船団を構えて、自他共に「海賊騎士」と号していたそうですよ。

 そしてこの辺りを統治していたのがハーフェン侯。
宮廷魔術師のブレッヒェンの力を借りて力と恐怖によって支配していました。
ハーフェンはブレッヒェンの魔力で己の欲の赴くままに好き勝手な事をしていた男で、その余罪は枚挙に暇がありませんの。
そのハーフェン侯が(・・と、ここで水を飲む。)、常日頃から邪魔に感じていたのがハーロック一族で、ある日ブレッヒェンに彼らを皆殺しにするように命じました。
かくしてハーロック一族は権力者の思うままになってしまいましてね。
氏も突然の奇襲に為す術が無かったのでしょう。
ハーロック氏は体に傷を負いながら部下と共に森の中へ逃げて行きました。

 反撃の策を考えている彼の許に、一人の女賢者が現れました。
名前はスマラクト。ゴスラーから彼に会いに来たのです。
伝え聞く話では彼女は彼にこう言ったそうです。
「運命の輪は廻り始めています。私とあなたはこれからずっと尽きる事の無い縁で出会いと別れを繰り返していくでしょう」とね。
スマラクトはその運命の輪にはあと3名ほど関わると言ったそうですが、このときはハーロック氏とスマラクト2人だけであります。
とにかくスマラクトは運命の星を頼りにハーロック氏に会いに来ました。
協力の手を惜しまない彼女に氏は承知しません。
これ以上の犠牲を払いたくは無かったのかもしれませんね。
だったら、と彼女は言います。
「あなたの鎧に祝福を授けましょう。」と。
それでもハーロック氏は承知しません。
あくまで誰の力に頼ることなく自分の力で戦うと言ってやみませんでした。
然し生身の人間が魔術師に敵うはずがありません。
スマラクトはその事をよく説明して彼を納得させました。

 その頃ハーフェンは反乱を恐れてまたしてもブレッヒェンの力に縋ろうとします。
ブレッヒェンの方はそろそろハーフェンが邪魔になっていたのでしょう。
助けるどころか逆に主人の命を奪ってしまいました。
そして彼の野心にまみれた鮮血は、魔神への供物とされてしまいました。
本当に気味の悪い話です。

 ハーロック氏が城へ向かっていると、一人また一人と人が集まってきました。
彼と共に戦う決意を固めた海賊の生き残りと圧制に喘いでいた市民たちです。
恐らくスマラクトが呼びかけたのでしょう。
スマラクトも、群集の中にいます。
どんな時代でも人々はより良い暮らしを求めてやまないものです。
その数を見て、城兵も慌てふためいて投降する始末。

 そしてとうとうハーロック氏とブレッヒェンは対峙しました。
スマラクトの忠告に違うことなく氏は何度か体を魔法の矢で貫かれそうになりました。
実際彼女の祝福が無ければ、彼の命は無かったでしょう。
激しい戦いは長く続きました。
・・・が、一瞬の隙をついたハーロック氏の一撃がブレッヒェンの体を貫いたのです。
氏も無傷ではありません。
体中いたるところに大なり小なりの傷が刻まれていましたが、取り分け深かったのは、頬に受けた傷でした。
ブレッヒェンは崩れながらも最後の力を振り絞って自分をこのようなめに遭わせた張本人に呪いを掛けました。
「この傷は私をこんな眼にあわせた報いとして永遠に負ってゆくがいい。そしてお前たち一族はこの先苦難の付きまとう生涯を永遠に送る事になるのだ・・!」
然し、その言葉にハーロック氏は笑って答えたそうですよ。
「安息などこちらから放棄するさ。俺も、俺の子孫も・・・」

 実際私も街の者も、ベルンシュタイン氏が世を去った後の代のハーロック氏を見ていますが、やはり左頬に大きな傷が斜めにはしっています。
ブレッヒェンの呪いは続いていますが、ハーロック一族はそれでも悠々と海の上を生きています。
呪いを受けた事をむしろ誇りにしているかのようにね。

 え?スマラクトですか?彼女は戦の終わった後ゴスラーへと帰って行きましたよ。
スマラクト、の意味ですか。
私は無学な女ですからあなた様の国の言葉でなんと言うのか分からないのですが・・。
あの、緑色をした綺麗な宝石のことを・・・・、え?エメラルドですか?
そうそう、エメラルドでございますよ。

 いつの頃になるのかは分かりませんが、ハーロック氏、そしてスマラクトと出会うべき残り3人の友人が早く出会うことを願わずにはおれません。
その頃には世界はどうなっているのでしょうか?
とても楽しみですね!


・・・・そう言って店の女将は屈託の無い笑い声をあげた。


 

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 ★がんま・れいさん、2作目、投稿してくださってどうもありがとうございました!!
  掲示板の方で話題にのぼったハーロックの傷が何故親子も先祖も同じ位置なのかという謎をヒントに作ってくださったというストーリーでした。
  ハーロックの出身地方は古くからの伝説とか神話とか、魔法がかかる話って沢山あるようですし、またそういう雰囲気もピッタリですからねぇ。
  語り手が酒場(恐らくは?)の女将っていうのがまたよくて、もうその時代、その場へ行ってしまったかのような雰囲気たっぷりのお話でした。

 


 

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