黄色い目の魚 佐藤多佳子 新潮社 ISBN:4-10-419003-9 |
家庭でも、学校でもなんとなく居場所がないような感じ。親にも友だちにもわかってもらえない、そんな疎外感を感じたとき。「この人は自分をわかってくれる」と思える人がたったひとりでもいれば生きていけるんだろうな。
ミンにとっての通ちゃんのように。
この本を読んでいて思った、時間は通り過ぎていくのではなく、積み重なっていくのだと。中学生だった自分も高校生だった自分も、今でも自分の中にいて、16歳の私が共感したり慰められたりしている。そんな感覚だった。あちこちのことばに気持ちがリアルに反応していた。それは子どもがふたりいる大人の私ではなく、確かにいた10代の私なんだよね。まるで本の16ペ−ジを開くように、16歳の自分の気持ちにすぐに戻れてしまうような気がした。本当に鳥肌がたつほどぐいぐい入ってきてしまう本だった。
神の守人 来訪編 上橋菜穂子 偕成社 ISBN 4-03-540280-X |
神の守人 帰還編 上橋菜穂子 偕成社 ISBN 4-03-540290-7 |
今回もバルサは素敵。読みながら思うことはたくさんあった。帰還編のあとがきにあるように、2001年のアメリカ合衆国で起きた同時多発テロの前に書きあがっていたそうだけど、あとがきを読むまでは、あのテロに触発されて書かれたものかと思った。世界の歴史をみれば、宗教の対立からくる争いはたくさんあったわけだけど、信仰をもたない人間(私)には、理解できない部分が多い。とにかく多くのことを考えるきっかけになる物語だった。
まだ、自分の中でうまく消化できていないというのが正直なところ。
憎しみなどの負の感情は大きなエネルギ−を生むけど、後には何も残らない。何も生み出さない。逆に誰かに愛された記憶や、やさしくされた記憶は大きな何かを生み、長く心に暖かいものが残る、そんな風に思う。
いつか記憶からこぼれおちるとしても 江國香織 朝日新聞社 ISBN4-02-257802-5 |
江國香織の作品の中で一番好きかもしれない。ひさしぶりにツボにはまった。
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17歳の気持ちを、 あなたはまだおぼえていますか?
(10人の女子高生がおりなす、残酷でせつない、とても可憐な6つの物語)
(帯より引用)
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17歳または高校生という時を手の届かない遠い過去においてきてしまったからなのか、それとも自分の中に残る10代の部分が反応したのか、どちらなんだろう。ここのところ本にまで見放されたような気持ちだったせいか、とにかくすごく良かった。
同じ制服を着ていて一見キャピキャピとしていて同じような女子高生に見えても、抱える問題はひとりひとり違うんだよね。でも、他人は見た目だけでしか判断してくれなかったりして・・・。誰の中にも毒や闇、または影はある。それは他者からは伺い知ることのできない部分だったりする。たとえ親や親友であっても、心の中の深い部分はきっと本人にしかわからないだろう。でも多くの人がそんな闇、または影なんてないように見てみないふりをしてりするんだよね。なんてことを考えながら読んだ。
それにしても江國香織って題名のつけかたがうまい!