葉桜の季節に君を想うということ  歌野晶午  文藝春秋 

先日のオフ会でなおぞうさんにいただいた本。
THANKS!

いやぁ、やられた!
読み始めからある先入観を持っていたので、結末の方ではもう「え〜〜〜!!」の連続だった。
読み終わってから題名の深い意味に気がついた。何を書いてもネタばれになってしまいそうなので、詳しくは書けないけど、読後感はいい。かなりお薦めの一冊。

   PAY DAY!!!  山田詠美 新潮社 

 白人の母と黒人の父を持つ17歳の双子のロビンとハ−モニ−。両親が離婚して1年、ロビンは母とニュ−ヨ−クに、ハ−モニ−は父とサウス・キャロライナに住んでいる。

 食わず嫌いというか、今まで山田詠美の作品は1冊も読んだことがなかった。でも、この本を読んで是非ほかの作品も読んでみたいと思った。

 あの9月11日のテロで母親を亡くしたロビンは、父とハ−モニ−がいるサウス・キャロライナで暮らすことを決意する。そこで、父や祖母、ハ−モニ−とともに、母の不在に折り合いをつけていく。

 たとえば、135ペ−ジの
「いつだって世の中の大きな悲しみには、ちっぽけな枝葉がある。極めて個人的な生活が、そのはしをになっている。(以下省略)」
という部分や147ペ−ジの
「言葉にしていかないと思い出は風化する。忘れられた人は、それこそ本当に死んでしまう」
というところ。など。
書き出せばキリがないほど、あちこちで共感し、涙しながら読んだ。でも、読み終わったあとは、まるで浄化されたように、すっきりとした気分だった。
山田詠美ってこういう作家だったんだ〜。今まで読まないで損したな。


  サマ−キャンプ  長野まゆみ 文春文庫 

私が今まで読んだ長野まゆみの作品とはかなり趣が異なる本だった。
 帯びの言葉「体外受精で生まれた温は出生の秘密を自らの手で明かそうと決意するのだが・・・」はちょっと違う気がする。
読後感はとても不思議な感じ。あれ?結局は何だったんだろう、ってテ−マがよくわからないような・・・、でも決して不快なわけじゃない。
以前に読んだ森博嗣の「スライ・クロラ」の読後感が似ている。
感情移入して読むのとは違って、ちょっと離れたところから見守っていたいと思うような感じ。

 ドゥ−ムズディ・ブック   コニ−・ウィリス ハヤカワ文庫

久しぶりに読んだSF。おもしろかった!

歴史研究のために14世紀に送られた女子学生ギブリンだが、到着早々に病に倒れてしまった。しかも、ギブリンは行く予定とは違う時代に送りだされてしまったらしい。

一方ギブリンを送り出した側でも原因不明の感染症が流行し、周辺は隔離されてしまう。感染症の流行は食い止められるのか?
ギブリンは無事に帰って来られるのか?

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やっぱりSFはいいなぁ。
読んでいる間ワクワクドキドキの連続だった。
しかも、最近のSARSの流行で、毎日のように防護服のマスクをした医師などの姿をTVなどで見ているせいか、ある意味、ただの作り話とは思えない臨場感があった。
また、14世紀でギブリンが味わった絶望や悲しみは心に染みた。

今現在もSARSで隔離されている人たちがいることを思うと、とてもただのお話とは思えない本だった。

  海を見る人  小林泰三  ハヤカワJコレクション

ハ−ドSFに分類され、あとがきで作者が「ハ−ドSFファンは電卓片手に読むと物語の裏側が楽しめる」とあるが、SFは好きだけど、そんなに知識が深くない私でも多いに楽しめた。

特に好きなのは「キャッシュ」と「母と子と渦を施る冒険」の間の部分。

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ここから引用 本文195ページより

他人に見せたい自分を装っているのに、他人はそれを見てくれない。
他人は自分が知らない自分を見続けている。
そんな世界は息がつまりそう。

いいかい。
僕の言うことをよく聞くんだ。
これはどこの世界でも同じことなんだ。
他人に見せたい自分は自分にしか見えていない。
他人は見たい自分しか見てくれない。
人は自分が見たいものを見ることができる。
人は自分が見たいものしか見ることができない。

-------引用ここまで 「海を見る人」(小林泰三 早川書房)より


ちょうど同じようなことを考えていた時期だったので、ずっしりと来てしまった。
表題作『海を見る人』はなんとも切ない話で大好きだ。


私は人に「自分が見せたい自分」を見せているのに、人は「見たい自分」しか見てくれない。人に見せたい自分も確かに私なんだけど、見せない部分に真実があるのかもしれない。

表題作の「海を見る人」はなんとも切ないお話だった。まさに表紙の絵そのまんま。
SFを読まない人にもお薦めの逸品。

    永遠の出口   森絵都  集英社

主人公の紀子の小学生から高校卒業までのエピソ−ドが年代を追って綴られている、ひとりの少女の成長物語。

どこもかしこもツボだらけ。「黄色い目の魚」(佐藤多佳子)を読んだ時と同じように、幼かった自分や反抗していた自分のあの頃が鮮やかによみがえってきた。
特に第四章の「母は私の話など聞かない。私の気持ちなどまったく興味がない」(本文P.111より)のところ。
本当にそうだったよ。家も。
 どこを読んでも共感できることばかりで、苦しくなってしまうほどだった。でも、エピロ−グで紀子が言うように、どんな未来だってありえたのに、今の自分を選んだのは自分なんだと心から思える。

これから、未来を選んでいく若い人たちにも是非読んで欲しい、年代を選ばない本だと思う。

 ブレイブ・スト−リ-(上)(下)  宮部みゆき  角川書房 ISBN4-04-873443-1(上)
                                       ISBN4-04-873444-x(下)

あの厚さで上下巻という長さにもかかわらず、飽きることもなく読めた。まだ早いけど、今年のベスト10は間違いなくはいりそう。


 冒険に出るまでが以外と長いのだけど、これくらいの事情がなければ小学校5年生の子が親元を離れてつらい旅などしないだろうと思う。
”幻界”で旅を続けるミツルとワタルの現実世界における家族や友だち、また抱いている感情の違いが後半にうまく効いていて、どこにも無駄がない。さすが宮部みゆき!
最後の方は読みながら涙が止まらなかった。
ワタルが冒険の旅の終わりで到達した心境になるのに、私は10年以上かかったよな、と思ったり。
小5で両親が離婚、ってことでワタルに対する思い入れがかなり強かったしね。
私が考える「行きて帰りし物語」(主人公がどこかに行って成長して帰ってくる物語)の見本のような本だった。


  童話作家はいかが    斉藤洋  講談社

「ルドルフとイッパイアッテナ」の作者斉藤洋が児童文学者または童話作家になったか、そして童話作家の仕事とはどういうものか、など。

斉藤洋は「ルドルフとイッパイアッテナ」で講談社児童文学新人賞を受賞して作家でデビュ−したが、何故<講談社児童文学新人賞>だったのか、「ルドルフとイッパイアッテナ」がああいう話になったのはなぜかなどすごくおもしろかった。
また児童文学者で食べていくことの大変さなど、裏話がたくさん!
あっという間に読めました。
各章の終わりにある教訓が最高!

  リトル・バイ・リトル  島本理生 講談社  ISBN4-06-211669-3

芥川賞候補作となった作品。
高校生の作品が候補になったので、結構騒がれた気がするが、何歳の人が書いたかとは関係なく好きな話だ。
前作の「シルエット」もあちこちに「なんでこんなことわかるの?」と、ドキッとする描写があちこちにあったが、今回も何年も会っていない父親に対する気持ちの部分ではかなりうなずけるものだった。
主人公のふみは順調に幸せ、とはいえない状況だけど、ことさら大変がるわけでもなくたんたんとしている感じがとてもいい。
これからが楽しみな作家がひとり増えたな。


  セカンド・ショット  川島誠 角川文庫

9つの短編が収録されている。 
幻の名作「電話がなっている」はラストが本当に衝撃的だった。しばらく呆然としてしまった。
身につまされたのは「ぼく、歯医者なんかにならないよ」
つい最近まで我が家に中学受験をめざす子がいて、その友だちの話などもいろいろ聞いたりしていた関係もあって、ただのお話とは思えない。

  クロ−ディアの秘密  カニグズバ−グ  岩波少年文庫

読もう読もうと思いながらずっと積読だった1冊。

”秘密”の内容ではなく”秘密を持つこと”が大事だったクロ−ディアB我が家の思春期入り口にいる娘のことを思った。
 ある人に娘がバレンタインに男の子にチョコをあげたことを聞いた。うすうす気が付いてはいたが、本人は白状しなかったのだ。でも、娘は私が(チョコをあげたことを)知っているとは思っていない。だんだん親に内緒、親には秘密ということが増えてどんどん成長していくんだな。

 かつて秘密をたくさん抱えた子供だった部分と、秘密を持ちつつある子供の親の部分と両方で楽しめ