情報通信技術の発展は急速に進んでいるため、調査や研究、あるいはコンサルティング等を行う場合にも少し先ぐらいを見越しておく必要があります。そこで、少し先の技術について少しずつですが、整理していきたいと考えています。書いた時点からすぐに内容が変わる可能性もあるのでご留意下さい。

サイボーグ社会の到来


1.サイボーグの時代
 仮面ライダー、キカイダー、サイボーグ009など、私が小学生の頃、ヒーローと言えば、多くはサイボーグであった。人の能力を超越した彼らに憧れ、「加速装置っ」(※)とか言って走り回っていた記憶も残っている。まあ、憧れてはいたものの、実際にはフィクションの中の存在という割り切りもあったと思うし、年齢を重ねるとともに憧れも徐々に薄れていった。でも、気が付くとサイボーグの時代はすぐそこまで迫っていたのである。

2.周りにいたサイボーグ
 神経工学とロボット工学の進展により、私が憧れていた高度なサイボーグが現実のものになりつつある。NHKの特集番組を見た人もいると思うが、神経伝達において生じる電気信号とそれを認識(処理)するコンピュータのインターフェースを設けることで、考えたとおりに義手を動かしたり、カメラで撮影した内容を脳の中に映像情報として認識させたりすることが可能になっている。
 ここであえて「高度な」という言葉を付けたのは、サイボーグが我々の周りにも普通に存在するからである。サイボーグ (cyborg) とは、サイバネティック・オーガニズム (Cybernetic Organism) の略であり、電子機器等を人体に埋め込むことで、人体機能を代替、あるいは強化した人間である。したがって、ペースメーカーや補聴器を付けている人もサイボーグと言って差し障りない。
 ただ、これまでと異なるのは、生身の手足と同様、脳で直接認識、あるいはコントロールできるという部分である。

3.サイボーグが生きられる社会
 憧れが現実化したとは言え、「高度な」サイボーグには様々な問題が存在する。
けがや障害による身体的な弱点を補完するためのサイボーグ化は受け入れられるであろうが、では身体能力を強化するためのサイボーグ化の是非はどうであろうか。サイボーグ化することで、人の記憶力や情報処理能力が飛躍的に高まるのであれば、それは経済的に見て大きなメリットをもたらすかもしれないが、生身の人間の方がサイボーグよりも劣るという社会がはたして成立するであろうか。また、この延長線上として兵士の能力強化等、軍事利用される危険性も存在する。
 一方、サイボーグが日常的に生活できるかどうかも怪しい部分ではある。ペースメーカーを付けている人と同じように、高度なサイボーグも機器に影響を与える電磁波等を気にしないといけない。悪意を持った第三者が埋め込まれた機器をハッキングし、勝手に義手が動いたり、カメラに写っていない映像を脳に送り込まれる可能性だってある。
 体に搭載した機器が継続的に保守できるかどうかの問題もあり、体の状態が日々変化することを考慮すると、神経とコンピュータをつなぐインターフェースの安定稼動は容易ではない。もちろん、飛行機に乗る度にセキュリティチェックで引っかかるなど、生活上の不都合も多くの場面で生じるかもしれない。

4.サイボーグとの共生
 能力強化型サイボーグの是非は更なる検討を要するが、少なくとも能力代替型のサイボーグに関しては、将来的に普及する可能性もある。したがって、このようなサイボーグが生身の人間と同じように生きられるよう、今後、生身の人間を前提とした社会システム(法律や慣習等)を変えてゆくことが必要であろう。

※サイボーグ009の特殊能力で、奥歯にあるスイッチを押すとマッハ5で動くことができる。


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