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情報通信技術の発展は急速に進んでいるため、調査や研究、あるいはコンサルティング等を行う場合にも少し先ぐらいを見越しておく必要があります。そこで、少し先の技術について少しずつですが、整理していきたいと考えています。書いた時点からすぐに内容が変わる可能性もあるのでご留意下さい。 | |
シームレスな通信の実現 はじめに ユビキタスネットワーク社会の到来と言っても、多くの人がそのメリットを享受するためには万人が容易に利用できるようなものでなければならない。例えば、電子メールの受信一つをとっても、自宅と会社と外出先では接続する通信手段が違っていたり、あるいは電子メールアドレスが異なっており、その複雑さが阻害要因になる可能性がある。 そこで、一つ重要になるのは、ユーザーが通信手段の違いを意識せずにネットワークを利用できることであり、それを実現するための技術としてシームレスローミング技術の開発が進んでいる。 シームレスローミング技術 利用者が置かれた通信環境に応じて最適な通信手段をデバイス(パソコン、PDAなど)が自動的に選択する技術がシームレスローミング技術である。ホットスポットと呼ばれる公衆無線LANサービスが普及してきたことから、出先において必ずしも携帯電話やPHSの移動体通信からインターネットに接続する必要はなくなった。また、自宅においても無線LANによる家庭内ネットワークの構築が進んでいる。このようなことから無線LANと移動体通信の間において柔軟に接続先を変更できる技術の開発が進められてきた。 シームレスローミング技術で重要になるのは、最適ネットワークの検出と選択、通信ネットワークの切替時のセッション(システムにおけるひとまとまりの操作)維持である。 最適ネットワークの検出と選択 まず、利用できる無線ネットワークを検出するためには、それぞれのアンテナをデバイス側で装備していることが不可欠である。ただし、すべての無線ネットワークを常時、探索している状態では消費電力等が多くなり、デバイス自体の利用時間にも影響する可能性がある。そこで、GPS等を使って場所を捕捉し、位置情報から利用できる無線ネットワークを検出するという技術の研究開発も行われている。 次に検出したネットワークの中から最適なネットワークを選定するわけであるが、最適の定義は利用者やシチュエーションによって異なってくる。スピードが重要になる場合もあれば、通信の品質や費用が安いことが重要になる場合もある。しかしながら、条件を踏まえて利用者が毎回、手動で通信手段を選択するのでは煩わしい。したがって、エージェントとなるソフトウェアにおいて一度条件を設定すれば、その都度、最適な無線ネットワークを自動的に検出するような仕組みもシームレスローミングの必須技術となる。 通信ネットワークの切替時のセッション維持 選択に基づく通信経路の切替に際してはセッションが維持できることが不可欠であり、Mobile IPという技術が用いられる。セッションを維持するためには、通信経路が変わってもIPアドレスが変化しないことが必要であり、Mobile IPでは、セッションを維持に使われるIPアドレス(Home Address)と通信経路の違いによって生じるIPアドレス(Care of Address)を分離し、前者で受け付けたデータを後者に転送することでセッションを維持する。つまり、大元の受け口となるエージェントが実際の通信相手とデータのやり取りを行い、そのデータをその都度適当な経路から出先のデバイスに転送することになる。 通常 通信相手→インターネット(通信回線)→デバイス(IPアドレス:Home Address) Mobile IP 通信相手→インターネット(通信回線)→エージェント(IPアドレス:Home Address) →インターネット(選択された通信経路)→デバイス(IPアドレス:Care of Address) おわりに このようなシームレスローミング技術は既に実用化段階に入りつつあり、昨年末、具体的なシステムの販売がある会社から発表された。また、米国では警察等において実装事例も増えてきている。パトカーに装備されている情報端末は、パトカーがホットスポットにいる時は無線LANを介して警察のネットワークシステムに接続し、そこから離れた場合は通信経路が自動的に携帯電話の回線に切り替わるようになっている。 また、第四世代の携帯電話においては、このようなシームレスローミング技術を標準で実装すべきとの提案も行われており、シームレスな通信環境が大衆向け商品において実現される日もそれ程遠くないと考えられる。また、通信経路をどこでもアクセス可能な超高速無線一本に統一すればこのような技術は必要ないという考え方もできるが、現状においては技術の多様性が技術革新を後押ししている感があり、しばらくは多様な通信経路を適宜選択するという利用形態が変化しないのではないかと予想される。 |
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