ホーム情報通信技術の今後>検索技術の新たな展開

情報通信技術の発展は急速に進んでいるため、調査や研究、あるいはコンサルティング等を行う場合にも少し先ぐらいを見越しておく必要があります。そこで、少し先の技術について少しずつですが、整理していきたいと考えています。書いた時点からすぐに内容が変わる可能性もあるのでご留意下さい。

検索技術の新たな展開


1.はじめに
 「情報検索」が我々の生活や経済活動において非常に重要な役割を担うようになってきていることは、周知の事実であり、Googleという企業が常に注目を集めていることからもそのことを伺い知ることできる。「情報爆発」という言葉を耳にするようになってきているが、我々の社会活動で生じる情報のデジタル化が着実に進んでおり、その情報量が膨大になってきている。EMCの協賛によってIDCが実施しているデジタル・ユニバース(デジタル化した情報の蓄積量)に関する調査によると、2007年時点での情報量は281エクサバイト(2,810億ギガバイト)であり、地球上の人口1人あたり約45ギガバイトのデジタル情報が蓄積されていることになる。情報は蓄積するだけでなく、使われてこそ意味を為すものであり、我々が探す情報とは通常、それ程大きくなく、数バイト程度の場合もある。つまり、蓄積された情報量と欲しい情報の関係を見ると、あたかも太平洋のどこかに沈んでいる100円玉を見つけ出すようなものであり、特別な支援技術がないと、まったくもって不可能である。そのような中、Web上の情報検索は古くから使われており、テキストをベースとしてこれまで発展してきているが、単純なテキスト検索の枠を超えた技術開発が進められている。

2.テキスト以外の情報を用いた検索
 文字以外の情報として考えられるのが、映像、画像、音声、臭い等が挙げられるが、テキストではなく、これらの情報そのものを用いた検索が可能になってきている。画像に関しては、その色合、輝度、構図等の特徴量を分析することで、類似映像を検索したり、画像が持つ意味合いを分析することが可能になってきている。分かりやすい例としては、携帯電話で撮影した写真を送信することで有名人との類似性をチェックできる「顔ちぇき」等が挙げられる。また、like.com等も同様のサービスである。
 音声に関しては、以前から音声認識の技術が発展してきており、近年はこれを応用して音楽等も認識可能になってきている。携帯電話の通話口に音楽を流すことで、曲名を検索できたり、「顔ちぇき」同様、有名人の声との類似性をチェックできる「声ちぇき」等のサービスも始まっている。
 映像に関しては、画像や音声よりも複雑ではあるが、両者をかけ合わせることで、類似映像等の検索を行うことも可能である。すなわち、画像の集まりとして映像を捉え、個々の画像の特徴量だけでなく、画像の配列や音声との関係性等を分析することで、映像の特性を把握する。

3.検索情報の最適化技術
 個人的なニーズに最適な情報を抽出するための検索技術も普及し始めている。最も一般的なものが協調フィルタリングであり、多くの人の嗜好情報を解析することで、利用者のニーズを推測し、お薦めの情報を抽出する技術である。Amazonのレコメンド等はその典型例であり、買った書籍の履歴等から、同じような購入履歴のある人が購入している別の書籍をお薦めするようになっている。
 昨今では、このような協調フィルタリングに留まらず、より多様な情報をかけ合わせて、より利用者に適した情報を提供しようとする動きがある。すなわち、Web上の購買等から得られる情報というものは限られているので、それ以外の情報を用いることで、各個人の特性をより精緻に把握し、より適した情報を提供する。例えば、最近では携帯電話についているのが当たり前になってきたGPSから位置情報を取得することで、その人が行動しているエリアを認識し、「ラーメン」と入力しただけで、近所でしかもおいしいラーメン屋の情報が提供されるようになる。

4.おわりに
 情報検索技術を新たなステージへと移行しつつあるが、そのサービスを実現するためには利用者側からの接近も必要である。特に個人に最適化した情報を提供するためには、逆に個人側からも情報を提供してもらうことが必要であり、プライバシーという意識と利便性のバランスをどう図っていくかが重要な問題となる。
 音声、画像、映像等を用いた検索技術に関しては、確かにあれば便利であり、今後、利用が進むとは思われるが、あくまでもテキスト情報の補完となる可能性もある。もちろん、どうしても文字で表現できない情報、例えば、鼻歌等を検索する場合、このような検索技術が非常に役立つが、その機会は検索機会全体としては微々たるものであろう。また、画像や映像検索技術等に関しては、悪用についても配慮することが必要であろう。例えば、画像認識技術を用いれば、携帯電話で他人の写真を取り、そこから個人情報にたどり着くことも可能で、このような利用も想定した技術開発が望まれる。


Copyright(C) Tadashi Mima  ALL Rights Reserved.  

 ホームへ    前のページへ