情報通信技術の発展は急速に進んでいるため、調査や研究、あるいはコンサルティング等を行う場合にも少し先ぐらいを見越しておく必要があります。そこで、少し先の技術について少しずつですが、整理していきたいと考えています。書いた時点からすぐに内容が変わる可能性もあるのでご留意下さい。

実社会とネットワークのリンク

はじめに
 携帯電話に代表されるモバイル技術と、インターネットの拡大に伴い、欲しい情報がいつでもどこでも取り出せるユビキタスネットワーク社会が到来しつつあると言われているが、実際にはそれほど単純ではない。例えば、街角で気になったオブジェがあった場合、「それが誰の作品でいつの時代に作られたものなのか」という情報を取り出すことは容易ではない。そこで重要になるのが、実社会(情報を得たい対象物、この場合はオブジェ)と、インターネット上の情報を結び付ける認証の仕組みである。この認証に関する技術には大きく二つの動きがある。一つは、ICチップ等の電子タグを対象物に内蔵することで認証する仕組みであり、もう一つは対象物の形状から認証する仕組みである。

電子タグ
 個体を認証できる目印を付加する仕組みは従来からバーコード等によって使われてきたが、電子タグは複数一括認証、遠隔認証、双方向性、設置の自由度等の点において、従来の仕組みより優れている。
 電子タグが注目されたのは、食品問題等が顕在化してきたことから、そのトレーサビリティを確保するための手段としてであるが、食品以外の物流全般への応用が進んできている。ただし、この電子タグの大きな課題は読み取る機械自体が普及していないことであり、電子タグが付けられた商品が市場に出回っても、あくまでも物流管理に用いられるだけで、消費者側の利用にはなかなか結び付いていない。最近になって、電子タグ読み取り機能を搭載した携帯電話の試作器が某キャリアから公開されたが、読み取り機器部分が大きく、携帯性という面では更なる技術革新が期待されるところである。

形状認識
 電子タグに関しては、その装備に費用と労力がかかることを考慮すると、利用範囲には限界がある。そこで、対象物そのものが最初から有する情報(形、色、音等)から認証を行う形状認識の技術が有効になってくる。昨今、セキュリティ分野で使われているバイオメトリクス認証等は形状認識の端的な例であろう。では、携帯電話を中心としたユビキタス利用においてどのような形状認識があるだろうか。
 まず、挙げられるのが携帯電話への装備が当たり前になってきたデジタルカメラの利用である。デジタルカメラでバーコード(QRコード等)を読み取り、それから情報を得る仕組みは、テレビの広告も手伝い、ある程度認知されているようだ。最近では携帯電話向けのOCRエンジンも開発され、撮影した画像情報からテキストデータを作成することも可能になってきているほか、携帯電話で撮影した顔の画像から個人を認証する技術も開発されている。
 もう一つは携帯電話の通話に使われる音声処理機能の利用であり、既に音楽認識サービスが市場において提供されている。音楽認識サービスというのは、街中で偶然耳にした音楽等を携帯電話に聞かせると、その情報をサーバに問い合わせて、曲名等の情報が検索できるものである。

おわりに
 携帯電話を活用し、対象物が何であるかを認証する技術は徐々に実用化しつつあるが、その社会的な浸透にはもうしばらく時間を要すると考えられる。前述した電子タグと形状認識は相反するものではなく、相互に補完する形で普及することが期待される。音声のように形のないものには電子タグを付けることはできないし、逆に形状から認識が困難なものには電子タグを付けることが有効である。通信速度や検索機能等、対象物の認証機能以外にも様々な課題はあるが、実社会の情報とネットワークをいつでもどこでもリンクできるユビキタスネットワーク社会に近付きつつあることは確かである。

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