地方公共団体のホームページにおける"Privacy Policy"表示について

 

1.はじめに

 最近、米国の州政府のホームページを見ると、文字通りホームページ、つまり最初のページに"Privacy Policy"を表示しているものが増えてきているようである。また、我が国でも主要なポータルサイトではプライバシーに関する事項の掲載が増えてきている。このようなことから本稿では地方公共団体のホームページにおける"Privacy Policy"表示について考察する。

2.米国州政府の動向

 まず、我が国より情報化が進んでいると言われる米国州政府の動向を見る。2000年4月11日現在において、"Privacy Policy"、いわゆる「個人情報保護政策(規定)」に関する項目が最初のページに掲載されているのは、50ある州のうち9つの州であるが、今後、更に増加するのではないかと予想される。企業と消費者、つまりB to Cの電子商取引(EC)サービスを提供するホームページにおいてはこのような"PrivacyPolicy"を示すのが常識となりつつあるが、地方政府のホームページにおいてはまだまだ少ない状況にある。しかし、各州政府において今後取り組みが盛んになると予想される"e-government"、つまり電子政府においては、電子商取引同様、G to C、つまり政府から住民(消費者)へ行政サービスを提供するために個人情報のやり取りが必然的に必要になる。したがって、ECサービスを提供するホームページ同様、電子政府としてオンラインの手続きや申請のサービスを展開する地方政府のホームページにおいても、"Privacy Policy"の表示が常識になる可能性が高い。
 各州における"Privacy Policy"の内容は様々であるが、主として以下のような内容が記載されている。

・個人情報を保護すること
・個人情報保護に関わる法律について
・cookiesを利用について(利用しないこと)
・オンラインサービス利用には個人情報が必要であるが、その利用は個人の意思によること
・個人情報の収集と電子メールアドレスの取り扱いについて
・収集した情報のセキュリティについて
・提供する情報の保証の放棄について(各個人で情報の利用リスクを負担)
・情報公開に関すること 

3.背景となる米国の動向

 EUが1995年に「個人データ保護」に関する指令を加盟国に出した一方で、米国には個人情報保護を目的とした包括的な法規制は存在しない。74年にプライバシー法が制定されているが、これは政府機関のみを対象とするものである。包括的な法規制がない代わりに、金融記録、信用報告、ビデオレンタル、ケーブルテレビ等、各分野毎に個人情報保護に関する法律がある。この他、96年の通信品位法702条においても消費者のprivacyについて触れており、98年には児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)が制定され、99年10月には電子医療情報プライバシー保護に関する法案が提出される等、個別の対応は進められている。しかし、ニューメディア開発協会のレポートによると、「クリントン政権と民間部門の立場は、民間の自主規制で十分であり、子供のプライバシーと医療情報に関する法案を除き、新たな法律を制定すべきではないというもの」であるそうだ。
 しかし、アマゾン・ドット・コム(www.amazon.com)やダブルクリック(www.doubleclick.com)が個人情報の悪用で訴訟を起こされる等、昨今、米国では電子商取引(EC)分野を中心に個人情報保護の問題がより一層注目を集めるようになってきており、米連邦取引委員会(FTC)では99年12月にオンラインアクセスとセキュリティに関する諮問委員会の設置を発表し、2000年2月からその検討を進めている。
 また、米調査会社ジュピター・コミュニケーションズが99年8月にとりまとめた調査では、オンラインサービスを利用する消費者の64%が「"Privacy Policy"が掲示されている場合でもプライバシーの侵害を危惧している」としており、電子商取引において独自の"Privacy Policy"のみでは消費者を安心させるのに不十分であることが窺える。

4.州政府の今後の動向

 独自の"Privacy Policy"のみでは不十分とする考えから、今後、米国のECサービスを提供するホームページでは、第3者機関による信用を求めることになるであろう。日本で行われているプライバシーマーク制度同様、既にTRUSTeやBBB(Better business Bureau)オンライン等の第3者機関がプライバシー基準に沿ったマークの付与を開始している。州政府に関しては、プライバシー法にも見られるように個人情報保護は当たり前であり、このような第3者機関による信用供与の対象とはならないかもしれないが、信用を高めるという面では"Privacy Policy"と法律との関連性を明確に示すことが必要である。ニューメディア開発協会のレポートによると、各州においてもプライバシーに関する様々な法律が存在し、50州の内48州において法律中でプライバシーの侵害に対する市民の行動権が認められているそうだ。しかし、実際、"Privacy Policy"を掲示している9つの州政府の内、州法との関連性を明示しているのは2つであり、今後、法律等とリンクした信用度の高い"Privacy Policy"の提示が求められよう。

5.我が国の動向と今後

 我が国の地方公共団体のホームページに関しては、これらの面での対応は遅れている。2000年4月14日時点でこのような"Privacy Policy"を掲載している都道府県のホームページは見あたらない。メールマガジンやオンラインサービスを行っている都道府県(のホームページ)があることを考えると、必要性があることは否定できない。また、米国ほど、プライバシーの問題がインターネット利用者の間で問題視されていないことも、対応が遅れている理由の1つとして考えられる。しかしながら、電子政府、電子市役所等の取り組みにより、ホームページや電子メールを介した行政サービスが更に増加することが想定され、これに際して、十分な"Privacy Policy"の検討が必要である。このような"Privacy Policy"はもちろんホームページに掲載して利用者の信用向上等に役立てるとともに、一方で、法律(条例)や情報通信技術と密接にリンクしている必要がある。したがって、技術的な部分に関しては技術動向を勘案して随時見直すことになるであろう。

6.参考

 "Privacy Policy"に関する項目を最初のページに掲載している州政府は以下の通りである。項目の名称は、"Privacy Statement"、"Legal and Privacy Information"、"Privacy Notice"等である。

 ・アラバマ州
  http://www.state.al.us/
 ・アイオワ州
  http://www.state.ia.us/
 ・カンザス州
  http://www.state.ka.us/
 ・メイン州
  http://www.state.me.us/
 ・ミネソタ州
  http://www.state.mn.us/
 ・テキサス州
  http://www.state.tx.us/
 ・ユタ州
  http://www.state.ut.us/
 ・バージニア州
  http://www.state.va.us/
 ・ワシントン州
  http://access.wa.gov/

 

参考ホームページ
http://www.law.co.jp/okamura/index.html
http://www.nmda.or.jp/enc/privacy/privacy-now1.htm

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